日本政策金融公庫とは?メリット・デメリットや融資の流れ等を解説

日本政策金融公庫

新事業のアイデアやビジネスチャンスはあるけれど、それを実行に移す資金がないという起業家の方は多くいるかと思います。

そうなると資金調達をする必要がありますが、民間の金融機関からは「会社としての実績がない」という理由で融資を断られてしまう事が多いです。

こうした状況下では、政府が100%出資している公的金融機関である日本政策金融公庫を活用することが有効です。起業家が外部から資金調達をする場合、まず検討するべきなのが日本政策金融公庫といっても過言ではないでしょう。

そこで本記事では、日本政策金融公庫の概要やメリット・デメリット、申し込みの流れなど詳しく解説します。

目次

政策金融公庫とは

「政策金融公庫」とは国が100%出資し、経営している公的金融機関のことです。行政改革の一環で「国民生活金融公庫」「農林漁業金融公庫」「中小企業金融公庫」「国際協力銀行」の4組織が統合、平成20年に発足しました。

政策金融公庫と民間の金融機関の大きな違いは「営利目的か、非営利目的か」という点です。

民間の金融機関はビジネスの一環として融資を行いますが、政策金融公庫では経済の成長や地域活性化などの政策目標を達成することが融資の目的であり、条件が合致していれば実績がない等リスクのある事業でも融資を行う場合があります。

様々な融資メニューが提供されていますが、特に経営環境の変化や取引企業の倒産に対応した「セーフティネット貸付」や、新たに事業を始める人を対象とした「新創業融資制度」、商工会議所などから推薦を得て受けられる「マル経融資」などが有名です。

政策金融公庫の融資の種類

日本政策金融公庫が提供する融資制度には、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の3カテゴリがあります。

それぞれ詳しく説明しましょう。

国民生活事業

「国民生活事業」とは、小規模事業者や創業企業に向けて小口資金や新規開業資金などを融資する事業です。

融資先数はおよそ117万先で、1先あたりの平均融資残高は1,008万円、無担保融資割合9割以上。融資先の8割が従業者9人以下の小規模事業者です。

また、「経営に役立つアドバイス」「セミナー開催」「創業サポート」など、小規模事業者・創業企業が必要とする様々な経営支援サービスを行っています。

中小企業事業

「中小企業事業」では、中小企業および小規模事業者の資金繰りを支えるセーフティネット機能の役割を担うとともに、成長・発展に資する政策金融支援を任務とした事業です。

中小企業事業は国民生活事業とは違い個人での利用はできず、利用可能な企業要件が細かく設定されています。また審査も国民生活事業に比べて厳しいため、融資を受けることで会社の信用度の高さが認められた証になるのです。

農林水産事業

「農林水産事業」は農林漁業や食品産業を営む事業者に対して支援を行う事業です。

農林漁業の「投資回収に長期間を要する」「天候などの影響を受けやすく収益が不安定」といった特性を踏まえ、食料の安定供給の確保、農林水産業の持続的かつ健全な発展に資する長期の資金を供給しています。

自然災害や家畜伝染病などにより一時的に経営が悪化した際、長期運転資金をはじめとする融資を行いセーフティネットとしての機能を発揮するのが、政策金融公庫における農林水産事業の役割です。

政策金融公庫の新創業融資制度

新創業融資制度とは、国民生活事業が提供している新たな事業を始める事業主や事業を始めてまもない事業主を対象とした、担保・保証人のいらない融資を行う制度の事です。新事業を始めるにあたり必要とする設備資金および運転資金として利用可能です。

ここでは新創業融資制度の利用要件や融資限度額、返済期間について解説しましょう。

利用要件

「新創業融資制度」を利用できるのは、以下の要件すべてを満たす事業主です。

  • 対象者の要件:新たに事業をはじめる人、または事業開始後に税務申告を2期分終えていない人
  • 自己資金の要件:創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる人

ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める人」「産業競争力強化法に定めた認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める人」等に該当する場合は、「自己資金の要件」を満たしているものとされます。

融資限度額と返済期間

新創業融資制度の融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)、返済期間は「各融資制度に定める返済期間以内」とされており、おおむね5~7年程度の返済期間が設定されます。

保証人は原則不要

前述したように新創業融資制度は無担保・無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及びません。

ただし、法人の場合、希望であれば代表者が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。

日本政策金融公庫のメリット

日本政策金融公庫のメリットを順番に解説します。

審査が通りやすい

まず、民間の銀行融資と比較すると審査に通りやすいというメリットがあります。銀行や信用金庫からの融資を断られたが、日本政策金融公庫の審査は通ったという話もあります。

前述したように政策金融公庫では経済の成長や地域活性化などの政策目標を達成することが融資の目的であり、条件が合致していれば実績がない等リスクのある事業でも融資を行う場合があります。

その為、民間の金融機関から融資を断られても、政策金融公庫の融資であれば受けられる可能性があるのです。

信用力が上がる

消費者金融やノンバンクから融資を受けた場合、取引先や出資者に悪い印象を与える可能性があります。

しかし、日本政策金融公庫の場合は審査が厳密だと知られているため、政策金融公庫の融資を受けている=「厳密な審査を通過できる会社、あるいは個人事業主」であると証明してくれる為、逆に信用力が上がります。

日本政策金融公庫から融資を受け、滞りなく返済することで融資の実績(信用)ができます。その結果、日本政策金融公庫以外の金融機関からも融資を受けやすくなります。

低金利で融資が受けれる

政策金融公庫は民間の金融機関に比べて金利が圧倒的に低いというのも大きなメリットです。

申し込み条件にもよりますが、金利は概ね1〜2%と低金利となっています。また、金利が低いだけではなく、創業融資など無担保・無保証人で融資を受けれる制度もあります。

返済期間が長い

政策金融公庫の融資は長期借入が主体です。利用する融資制度によるものの、運転資金は最長7年、設備資金は5年以上20年以下で返済期間を選べます。

返済期間が長い分、月々の返済額は低くなり、安定した資金繰りをしやすくなります。

事業についてアドバイスを受けられる

政策金融公庫では、融資だけでなく事業の発展や今後の展開について相談できます。過去に政策金融公庫の融資を受けた事業者が「その後どのように事業を展開していったのか」「どのような過程を経て成功、失敗したのか」等の情報を把握している為、ケーススタディを持ってアドバイスしてもらえます。

政策金融公庫支店には相談窓口が設置されており、窓口を通して税理士や中小企業診断士に相談することも可能です。

政策金融公庫の融資のデメリット

政策金融公庫には審査に通りやすい、金利が低い、信用力が上がる等多くのメリットがあるものの、同時にいくつかのデメリットも存在します。ここでは政策金融公庫のデメリットを4つ解説します。

審査に時間がかかる

民間の金融機関によっては数日~1週間程度で融資が決まりますが、政策金融公庫では3週間から1カ月ほど時間がかかります。これは政策金融公庫には地方自治体、信用保証協会、民間金融機関の三者が絡んでおり、それぞれに審査が必要なためです。

借り換えができない

「自分がすでに融資を受けている銀行より、政策金融公庫のほうが低金利だから借り換えをしたい」と思っても借り換えはできません。これは「借り換えの結果、民間金融機関を圧迫しては、政策金融公庫の基本理念に反する」と考えられているためです。

繰り上げ返済ができない

政策金融公庫で融資を受けた場合、「国民生活事業」であれば繰り上げ返済可能ですが、「中小企業事業」であれば繰り上げ返済はできません。

金融機関は融資した金額の利息で売上を立てている為、繰り上げ返済が行われると金融機関側の不利益になります。

その為、融資金額が比較的少ない国民生活事業では繰り上げ返済を可能とし、融資金額が比較的多い中小企業事業では繰り上げ返済を不可能とされています。

担当者を選べない

政策金融公庫で融資を受ける際は基本、納税地の住所で支店が決まるため、利用したい支店を選べません。また担当者の指名もできないため、必ずしも自社業界に精通した担当者になるとは限りません。

事業内容に明るくない職員が担当になると、まずは事業内容の説明から始まります。「どのような職員が担当になるかは運によるところが大きい」というのもデメリットのひとつです。

政策金融公庫の融資の流れ

政策金融公庫から融資を受ける際はまず窓口で相談し、次に「借入申込書」を含む必要書類を提出、そのうえで面談を受けます。ここでは政策金融公庫から融資を受ける際の流れについて解説します。

相談と申し込み

政策金融公庫の融資を受けるには、まず始めに最寄りの政策金融公庫支店に連絡して相談の予約をとります。その後支店窓口を訪問して融資の相談をし、申請に必要な「創業計画書」や「借入申込書」などの書類を受け取ります。

初期相談の時点で、創業計画書の書き方や融資を受けやすい対策などを聞いておくとよいでしょう。

また、政策金融公庫の融資を受けるには、さまざまな書類が必要です。

  • 創業計画書
  • 過去2年分の源泉徴収票もしくは確定申告書
  • 運転免許証のコピー
  • 半年分の通帳のコピー
  • 印鑑あるいは印鑑証明書
  • 不動産の登記簿謄本

必要書類は個人/法人、現在取引の有無でも変わってくる為、提出前に必ず担当者に確認しましょう。

審査

必要書類を提出してから約1週間後に、日本政策金融公庫の担当者と面談を行います。

面談の所要時間は30分~1時間程度で、提出した書類をもとに資金の使い道や事業の状況ついて質問されるのでしっかり答えられるようにしておきましょう。場合によっては面談後に追加資料の提出や補足説明を求められる場合もあります。

提出書類と面談の内容を総合的に判断して、審査がおこなわれます。審査期間期間は2~4週間ほどです。

契約・融資

すべての審査が終わり、無事融資が決定すると決定の通知と融資実行のために必要な書類が送られてきます。

これらの書類に必要事項を記載・返送し、日本政策金融公庫が内容確認を完了すると着金となります。書類内容に不備があると着金が遅くなるため、よく確認して送りましょう。

日本政策金融公庫から融資を受けられないケース

日本政策金融公庫の審査は事業者の信用情報に過去の返済遅延や延滞などが記録されていると融資を断られる可能性があります。

また、資料で説明した内容と面接での話に矛盾があったり、一貫性がない場合なども審査に通りにくくなるので、面談対策はしっかり行いましょう。

まとめ

起業家が外部から資金調達をする場合、まず検討するべきなのが日本政策金融公庫です。

日本政策金融公庫から融資を受けることを検討中の人は、まずは自社や自身の状況を担当者に相談してみましょう。

最後に、クラウド資金調達は公庫・制度融資だけでなくあらゆる資金調達方法の中からあなたに最適な資金調達方法をご提案するサービスを提供しております。

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この記事を書いた人

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