土地のうち、相続税申告をしなければならないのは土地の所有権だけではありません。例えばご自宅が、土地を借りて建てたような場合、借地権付建物と言われますが、この場合も借地権として申告をしなければなりません。
また、ご自分の土地を他の人に貸している場合、その土地の所有権はあっても実際に自分で使うことはできないのですが、この場合も地代をもらう権利はありますので底地として申告をする必要があります。
土地は所有権であって、その上にアパート等を建てて賃貸している場合、相続税申告の際に貸家建付地として申告することで通常の土地の所有権として申告した場合より減額される規定があります。
借地権の評価
相続税申告の際の借地権の評価は、国税庁が公開している財産評価基準書に借地権割合が定められていますので、これまで見てきたように更地の価格を評価した上で、その価格に借地権割合を乗じるという単純な方法です。
財産評価基準書の相続税路線価図で見ると、例えば「100D」等と記載がされています。
この意味は、その道路に面する土地の相続税路線価による基準額は100,000円/㎡、借地権割合はDの地域ですよということです。
借地権割合はアルファベット順にA~Gに分類されており、これが借地権割合を示しています。
上の例では、更地価格が100,000円/㎡基準、借地権割合はDで60%なので、不整形補正や間口奥行補正等がない土地の場合、借地権の価格は100,000円/㎡×60%=60,000円/㎡と求められます。
単純に地主から土地を直接借りている場合はこの通りの方法で良いのですが、土地の借主は地主の承諾があれば他の人に土地をまた貸し(転貸と言います)することもできます。
その場合の評価方法についてみてみましょう。これを「転借地権の評価」「転借権の評価」と言います。
転借地権の評価については、借地権の割合を2回かけます。
上の例では100,000円/㎡×60%×60%=36,000円/㎡が転貸借地権の価格ということになります。
もう一つ、転貸借地権の評価方法についてもお話しします。
転貸借地権は、「Aさんが所有している土地をBさんが借りている、BさんはCさんにその土地をまた貸ししている」という状況の、Bさんの借地権のことです。
Cさんの借地権は上で見た転借地権ですが、Bさんの借地権が転貸借地権となります。
この場合もBさんの相続人は相続税申告をしなければなりません。
この転貸借地権の評価は、「借地権割合から転借権割合を引いて」求めます。
上の例では、100,000円/㎡×{60%-転借権割合(60%×60%)}=24,000円/㎡が、転貸借地権の価格になります。
底地の評価
底地は、冒頭でもお話ししたように「自分の所有している土地を他の人に貸している場合のその土地の所有権」のことです。
底地の評価も基本は単純で、1-借地権割合を土地の価格にかけて求めます。
上の例では、100,000円/㎡×(1-借地権割合60%)=40,000円/㎡が底地の価格です。
あまり難しいことはありません。
貸家建付地の評価
貸家建付地というのは、自分の土地の上にアパートやマンション、賃貸用ビル等を建てて他の人に建物を貸している場合のその土地のことです。
この場合の土地の評価は、借地権と同じように「更地の価格×貸家建付地割合」によって求めます。
貸家建付地割合は、1-(借地権割合)×(借家権割合)で求められます。
借地権割合は相続税路線価図を見ればわかります。借家権割合についても財産評価基準書にその地域の標準的な借家権割合が書かれていますので、それに従います。
尚、相続税評価における借家権割合は平成18年以降全国一律に30%とされています。
最初の100Dの路線価が設定されている地域の例で言えば、貸家建付地割合は
1-借地権割合60%×借家権割合30%=82%
と求められますから、この土地の貸家建付地価格は
100,000円/㎡×貸家建付地割合82%=82,000円/㎡
となります。
では、ちょっと難しくして「他の人から借りている土地の上にアパートを建てて建物を貸している場合」のことを考えてみましょう。この評価を貸家建付借地権と言います。
この場合の貸家建付借地権割合は、
1×借地権割合-借地権割合×借家権割合
で求められます。マイナス以降は貸家建付地割合を求める式と同じです。
上の例では
1×借地権割合60%-借地権割合60%×借家権割合30%=42%
ですから、この場合の貸家建付借地権価格は
100,000円/㎡×貸家建付借地権価格42%=42,000円/㎡
となります。
まとめ
上記で借地権、底地、貸家建付地及び転貸のケースの評価方法の基本を説明しましたが、これも申告しなければ受理してもらえません。
借地権として使用している土地の権利を所有権として申告するケースはないとは思いますが、筆者がこれまで相続税申告書類を見てきたケースでは、貸家建付地とすべき土地を完全所有権の土地として申告したため、2割以上高い評価額になってしまっていたケースもありました。
相続税の節税に当たっては、正当な範囲内でどのように評価額を切り下げるかがカギになりますので、誤った申告を防ぐためにもこのようなケースでは完全所有権の土地より減額されるということは覚えておいてください。