一度くらいお聞きになられた方もいらっしゃるかと思いますが、今回は航空機のオペレーティングリースを活用した節税対策を紹介します。
航空機のオペレーティングリースを利用した取引については1件当たりの金額が比較的大きくなるために節税効果が大きい反面、いくつかのリスクも想定されますので、ここではスキームの概要、節税効果および想定されるリスクについて説明をさせていただきます。
航空機リースを活用した節税スキームの概要
まず基本的な理解として航空機のオペレーティングリースでは匿名組合がそのスキームに利用されます。匿名組合については普段あまり耳にする機会がない方ものほうが多いかと思いますが、不動産の証券化など世の中ではそれなりに利用されています。
航空機リースを利用した節税のための匿名組合の作り方
まず合同会社や株式会社などの日本の会社を営業者として、投資家である匿名組合員との間で商法上の匿名組合契約が締結され、投資家は匿名組合の出資金として営業者へ資金を拠出します。投資家からの資金の拠出は基本的には当初の子の1回のみとなります。
また、営業者は銀行等の金融機関から借入れを行い、投資家からの出資金と合わせて航空機を購入します。その後、営業者は航空機を航空会社へリースを行い、航空会社からリース料を受領します。リース期間終了後、航空会社は航空機を営業者から購入しスキームが終了します。匿名組合は、スキーム期間中において発生する損失及び利益を投資家へ分配を行います。
航空機リースを活用した2つの大きな節税効果
航空機リースを活用した節税効果①『多額の損失』
さて、上記が航空機オペレーティングリースの基本的な仕組みですが、それではなぜ上記のような仕組みで節税できるのかを解説します。
まず、投資家(法人を前提とします)が匿名組合に出資を行った場合、当該投資家は匿名組合において発生した利益または損失をその益金または損金として認識します。従って、仮に匿名組合で損失が発生する場合は投資家において損金が計上され、匿名組合で利益が計上される場合、投資家において益金を計上する必要があります。
これを航空機リースに当てはめた場合どのようになるでしょうか。
航空機リースでは、航空機の税務上の耐用年数の関係で、早期に多額の減価償却費が計上されます。スキームの当初では航空会社より受領するリース料より減価償却費のほうが大きくなり、必然的に匿名組合では損失が生じるため、投資家においても多額の損金が計上されます。
他方で、スキームの後半では減価償却費は減少するため利益が計上され、投資家にも益金が生じます。また、スキーム終了時に航空機が売却される場合には多額の利益が計上されるため、投資家においても多額の益金が生じます。
航空機リースを活用した節税効果その②『多方面の節税になる』
航空機リースは上記のような法人税だけでなく所得税や相続税の節税としても活用させられることが考えられます。
まず、前の通り、匿名組合への出資後の数年間において多額の損失が計上されます。これは例えば匿名組合に出資する金額を現金で保有した場合には当然ながらそのような損失は計上されません。このような損失が計上されることが、投資家である法人の税務上の価値が減少します。その後、後継者へ株を移転させることによって当該移転に係る税金を抑えることが可能になります。
しかしながら、株式の移転は株式の発行法人においていかなる損金を発生するものでもありませんので、このままではリース期間終了時に多額の益金が発生することとなります。
従って、リース期間終了時に発生する益金に当てる損金を発生させる必要があります。その損金として当初の経営者は株式の移転のタイミングでは退任をせず、リース期間の終了のタイミングで退任を行い、法人は経営者に役員退職慰労金を支払います。役員退職慰労金は、その額が多額でない限りは法人の損金となり、また所得税も優遇されていますので、普通の役員報酬よりも経営者の手取りが大きくなります。
従って、航空機リースを活用することで、法人税の繰延、相続税の節税、所得税の節税という多方面にわたって会社及び経営者の節税を図ることが可能となることもあります。
航空機リースを活用することで想定される3つのリスク
ここまでは航空機リースの節税効果を説明してきましたが、当然あらゆる商品について特有のリスクが存在しますので、ここからは航空機リースの主なリスクを説明させていただきます。
中途解約ができない
航空機リースに関しては、通常その期間が10年前後となっており、その期間は原則として解約ができません。従って、いったん拠出した資金は(もちろん期間中においてリース料の受領はありますが)、その大部分は一定期間投資家において使用できないためある程度の必要運転資金を確保したうえで出資の判断や出資額を決定する必要があります。
為替リスク
航空機リースに関しては、大半の商品は外貨建てとなっており、分配金も外貨建ての分配金が円換算されることとなり、為替リスクが存在します。つまり、例えばリース期間満了時に出資時点よりも円高となっている場合は、想定した分配よりも受領する金額が小さくなります(円安となっている場合は当然ながら受領する金額も大きくなります。)。将来の為替レートの予測はプロでも困難であるため、このような為替リスクがあうことは認識をする必要があります。
元本保証がない
航空機リースに関しては、通常元本保証がありません。従って、リース会社の倒産や、航空会社の倒産、その他上述したような為替の変動場面においても、元本の保証は確約されていません。従って、数ある商品の中からの適切な商品の選択が重要となります。
【法人の節税】航空機リースを活用した効果的な節税方法と潜在リスクまとめ
繰り返しですが、航空機リース等の“スキーム”を利用した節税商品については、そのリスクも含めた“仕組み”理解が何よりも重要になります。
また、一口に航空機リースと行っても、上述したように外貨建てのものから円建てのも、航空会社やリース期間も様々です。さらに、匿名組合は一般的には知名度も低く、とっつき辛い部分もあります。
航空機リースを行う場合は、そのようなリスクや制度に加え、投資家の個別事情も考慮して投資額、時期を決定する必要がありますので、ご興味のある方はぜひ個別にご相談ください。