貸倒損失と貸倒引当金を計上して節税

取引先が経営不振に陥ったり、今後の取引の継続を考慮して、債権の回収を諦めるケースがあると思います。そのような場合でも、債権の貸倒損失を計上するには注意が必要です。税務上の要件を正しく理解すれば節税対策としても有効です。

目次

法的な貸倒損失

法的に貸倒れたことが確定している部分は、貸倒損失に計上することが認められています。これはかなりケースが限定されていて、主に次の2つのケースです。

  1. 会社更生法、民事再生法等の規定に基づく認可決定により切り捨てられることとなった金額
  2. 債務者の債務超過が相当期間継続し、債権が弁済できないとされるとき、債務者に対し書面により明らかにされた金額

事実上・形式上の貸倒損失

債務者の資産状況、支払能力等からみて、全額が回収できないことが明らかな場合、貸倒れとして損金経理した金額を計上できます。注意しなければならないのは、債権の全額を損金経理しなければならないこと、全額が回収できないことが明らかになった事業年度にのみ計上が可能であること、です。債権の一部を計上したり、回収できないことが明らかになった後、任意の事業年度に計上することは認められません。

形式上の貸倒損失計上も、売掛債権については、次の2つのケースに限り認められています。

  1. 債務者と取引を停止してから、あるいは最後に支払があったときから1年以上経過したとき
  2. 同一の債務者に対する債権総額が取立費用よりも少ないとき

貸倒引当金を計上するには

貸倒損失以外にも、貸倒れの可能性がある債権について、貸倒引当金を計上することでその分の税金を繰り延べることができます。計上した貸倒引当金は翌期に必ず同額を戻入れという形で益金計上するので、1年だけ繰り延べることになります。

貸倒引当金には個別評価金銭債権と、一括評価金銭債権とがあります。それぞれ、設定の仕方が異なります。

個別評価金銭債権の貸倒引当金は、実際に貸倒れる可能性の高い事実が発生していることが条件となり、条件によって計上できる金額が決まっています。具体的には、以下のようになります。

  1. 会社更生法、民事再生法等の認可決定により、返済が猶予され、または分割払いにより弁済されるもののうち、5年以内に返済されないものの金額
  2. 会社更生法、民事再生法等の規定に基づく手続開始の申立てがされた金銭債権のうち、取立て見込みがある金額を控除した金額の50%相当額

次に、一括評価金銭債権の貸倒引当金は、資本金1億円以内の法人という制限がつきますが、ほぼすべての金銭債権について、過去3年間の平均貸倒実績率か、業種別法定繰入率のいずれか有利な方を選択して計上することができます。法定繰入率は、小売・卸売・飲食であれば0.1%、製造業は0.8%、サービス業などは0.6%と決まっています。

まとめ

貸倒損失、貸倒引当金の計上は、きっちり計上すれば節税になる反面、税務上の規定がややこしく、また、規定に従っていないと否認されてしまうリスクも抱えています。

特に、具体的な貸倒れの事実が発生していない金銭債権についても貸倒引当金が計上できる、一括評価金銭債権の貸倒引当金の計上は、節税効果が大きいので、要件を確認して利用したいものです。

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