親から子へ住宅を売却した場合の贈与税は?専門用語を分かりやすく解説!

これまで親が子供に住宅取得資金の援助をした場合、贈与税が課税される(非課税枠等の範囲内を除く)ということをお話ししてきました。

では、親が子供にお金ではなく住宅という不動産自体を与えた場合はどうでしょうか。
代金を取らずに与えた場合は当然贈与になりますが、代金を取った場合はどうなるのでしょうか。

今回はややこしい話が多く出てくるため専門用語を分かりやすく噛み砕きながら解説していきます。

目次

”時価”より低い場合は贈与税・譲渡所得税がかかる

親が子供に住宅を売る場合、その売買価格が時価(※下で解説します)より低ければその時価との差額分については実質的に親から子供への利益供与があったものとみなされて贈与税が課税されます。

例えば時価5000万円の土地を子供に4000万で売却した場合、

5000万 − 4000万円=1000万円

この1000万円に贈与税が課税されます。

なお、親の側から見るとこのやりとりは売買ですから、もちろんですが譲渡所得税も課税されます。その際には売買価額から取得費と譲渡費用を差し引いた残りの残額へ課税されます。

住宅用不動産の譲渡所得税については別記事にて解説しますが、基礎控除額等もありますので実質的に多額の税金を課税されるケースはさほどないとも言えますが、著しく低額で子供に住宅を売った場合、贈与税と譲渡所得税のダブルで課税されるリスクがあります。

時価とは?

かなり前には、親子間の不動産売買の際に時価より著しく低い価格かどうかという「時価」は、相続税路線価等で算定されていました。

つまり、路線価に土地の面積をかけた価格+建物の固定資産税評価額等の合計を時価とみなし、これが売買価格より下回っていれば著しく低い価格ではないとして、贈与税は課税されないという取り扱いをされていました。

これまでの時価の決められ方を例をもとに解説します。

一般の市場で取引される価格が5,000万円の土地があったとします。

相続税路線価は地価公示価格の概ね80%で評価されていますから、この土地の価格が市場価格の5,000万円=公示価格の水準とすると、路線価評価額は5,000万円×80%=4,000万円となります。

つまり、親がこの土地を5,000万円で買って子へ4,000万円で売ったとすると、子供の方は路線価で算定した価格と同額ですから贈与税が課税されず、1,000万円の赤字が出るため、譲渡所得税を払わなくて良いということになっていたわけです。

しかし、これでは実質的に路線価水準を逆手にとった脱税行為であるということになり税務署の方も見過ごしていられず、時価とは「通常の取引価額に相当する金額である」としたのです。

そのため、現在では贈与かどうかを判断するための「時価より著しく低い場合」の時価は、『通常の取引価額』を判定基準とするという取り扱いになっています。

通常の取引価額とは?

ここでいう『通常の取引価額』とは、「特殊な関係のない第三者間で、通常成立するであろう売買の場合の価額」とされています。なんだか分かりづらい話ですよね。なので不動産屋さんがお客さんに売る一般的な値段くらいに考えていただければOKです。

そもそも「特殊な関係のない第三者間で通常成立するであろう売買の場合の価額」とは、不動産鑑定評価基準で言う「正常価格」と同じ意味ですが、税務署等の公的なところに提出する価格を判定するためには不動産鑑定士による不動産鑑定評価書に記載された金額でなければならないのが法律で定められています。

しかし、いちいち売買の時に何十万円~何百万円もかかる不動産鑑定評価を取る人は、少なくとも個人間の住宅売買ではコストと利益がペイしませんからほとんどいません。もちろん税務署も一々不動産鑑定士の鑑定評価を取ってくださいとは言いません。

そこで一応取り扱いでは「相続税路線価等ではなく、地価公示価格等と比較して求めた価格ならいいですよ」ということになっています。

相続税路線価は公示価格水準の80%、固定資産税路線価は公示価格水準の70%で設定されており、先に述べたような実質的な脱税はこの公示価格水準と路線価の水準の差を利用して行われていたわけですから、この差を無くしますよとしたわけですね。

よって、先の例で言うと公示価格から求めた価格が5,000万円の土地を5,000万円で親が買って、子供に5,000万円で売った場合は贈与なし、4,000万円で売った場合は1,000万円の贈与とされるようになったわけです。

親子間での売買の例

公示価格評価5,000万円の土地を親が6,000万円で買って、子供に5,000万円で売ると?

この場合を考えてみましょう。

税務署の判断基準では公示価格で評価した金額であれば「時価より著しく低い価格ではない」ということでした。

しかしこの場合、親から子供へ売った額が公示価格水準とピッタリだったとしても、差額の1,000万円は親から子供への贈与として扱われることになっています。

公示価格は不動産取引市場において、取引の関係者が「参考とする」べき価格とされていますが、絶対の基準ではないということです。
この場合の判断は実際の取引価格>公示価格というウエイト付けになるということはお忘れになく。

負担付贈与も規制される

負担付贈与とは、例えば親が5,000万円でマンション(相続税での評価額4,000万円)を自己資金1,000万円、住宅ローン4,000万円で購入し、それを子供に対して子供が4,000万円の住宅ローンを払う代わりにマンションを譲り受けるという形で与えるようなケースを言います。

この場合、子供に対する贈与税は、評価額=住宅ローン債務ですから課税されません。

このように対価を得て贈与する場合は、親に譲渡所得税も課税されません。

しかし、この場合も上と同じように相続税評価額では不合理であるので、この場合も売買金額と住宅ローンの差額の1,000万円について譲渡があったものとするとの取り扱いになりました。

まとめ

かつては親から子供へお金ではなく不動産というモノの形で住宅を実質的に贈与した場合、税法上の評価額と実際の売買価格との間の差を利用して贈与税を逃れることができるような制度でしたが、今はこのようなことはできなくなりました。

また、税務上の評価額を路線価ではなく公示価格水準で行いますよということになっていますが、公示価格水準よりも実際に売買した価格が上回っていれば、それを時価として扱うようになっています。

このような方法で贈与税を節税(実質的には脱税です)しようとすると追徴課税の可能性もある危険な方法になっていますので、ご留意下さい。

お金でなく現物で住宅をやり取りする場合には、公的水準から見た評価額、実際の売買価格、譲渡価格を十分検討の上で行う必要があります。

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この記事を書いた人

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