不動産登記簿の乙区には、「所有権以外の権利」が記載されます。
やはり一番多いのは、住宅ローン等を組んだ際に金融機関から土地建物に設定される抵当権の登記でしょう。
その他、乙区には賃借権や地上権といった、「土地を利用する権利」を登記することもできますが、それぞれについて登録免許税がかかります。
ここでは登録免許税の乙区登記の税率、固定資産税評価額について解説していきます!
抵当権の登記にかかる税率
抵当権の設定登記に関する税率の原則は、「債権金額」の0.4%となっています。
ここで注意していただきたいのは、甲区の登記にかかる登録免許税の計算方法は「固定資産税評価額の○○%」であったのに、抵当権設定登記では「債権金額」になっていることです。
住宅ローンや不動産投資向けアパートローン等では、大体物件金額に申込者の属性を加味した掛け目をかけていくら融資するかを金融機関が設定していると思います。
その場合の掛け目は多くの場合7~8割程度と言われていますが、物件代金は契約で決まるものですから、固定資産税評価額に縛られるものではありません。(固定資産税評価額で物件を買えるのであればほとんどの人が相当得したと考えるような低水準です)
そのため、ローン申込金額に掛け目をかけても、債権額は固定資産税評価額を上回ることがあります。この違いには注意してください。
尚、甲区で説明した住宅の移転登記の特例の条件に当てはまる住宅に関する抵当権設定登記の場合、新築住宅であっても中古住宅であっても税率は0.1%まで軽減されます(2020年3月31日まで)
地上権、賃借権の設定登記に関する税率
地上権や賃借権、転貸による賃借権についても乙区には登記できます。
その場合の税率は固定資産税評価額の0.1%になっています。
尚、法律上は地上権を借主は他の人に移転ができ、賃借権でも貸主の承諾を得ることができれば他の人に譲渡することができます(かなりのレアケースではありますが)。
この場合、地上権や賃借権の移転登記をすることもできますが、その場合の税率は所有権移転登記に要する税額の1/2となっています。
尚、地上権や賃借権は登記が「できる」のであって、「しなければならない」ではありません。実際の例を見ても、1階の店舗を借りたから賃借権の登記をしますという人はほとんどいません。やや法律上の小難しい話になりますが、登記は「権利関係を第三者に対抗するために行う」ものという解釈が一般的で、裁判所による判例も同様の見解をとっています。
第三者とは地上権や賃借権の場合、貸主でも借主でもない人のことです。
例えば、貸主がAさんに土地を貸す契約をした後、Bさんにも同じ土地を貸す契約をしてしまった場合、Bさんが賃借権の登記をしていれば、仮に後から契約したとしてもAさんに自分の権利を主張でき、その土地を使えるのはBさんということになります。
ただ、どちらも登記をしていない場合は、先に契約したAさんが優先します。
いずれにせよ、賃借権の登記をしているのはレアケースで、筆者もあまり見たことがありません。地上権も同じように他人の土地を利用できる権利ですが、地上権設定登記も少ないのが実態です。
地上権が登記されているのが多いケースは、電力会社が所有する高圧送電線の下の土地で、危ないから高圧線から何m離して建物を建てなければいけないと決めている場合、そもそも建物を建ててはいけないということを示すために登記されている場合や、地下トンネルを建設するために、地下何mから何mまではトンネルの所有者が利用する権利を有するという登記をしている場合で、ほとんどの場合は関係ないといったことが多いでしょう。
まとめ
少し横道にそれましたが、乙区の登記にかかる登録免許税のお話をしました。
ほとんどの場合は抵当権の登記、というケースだと思いますが、抵当権の登記に関しては税率にかける価格が「固定資産税課税標準額」ではなく、「設定した債権の額」であるということに注意してください。