先の記事でお話しした通り、筆者の実感では固定資産税に不服を申し立てても、実際に減免が認められる割合は非常に少なく、それも評価上誰が見ても明確な誤りがあるようなレアケースに限られるということをお話ししました。
日本の土地制度は「所有権ではなく固定資産税・都市計画税という賃料を払って行う永久リース」等と揶揄されることもありますが、制度上そうなっているものは仕方ありません。
節税方法はないではありませんが、固定資産税に関しては「節税」を考えるより土地をどう「有効活用」するかを考えた方が良いと考えます。
【節税&有効活用の例】土地にアパートやマンションを建てて固定資産税額を減らす方法
固定資産税には、200㎡未満の小規模住宅地に関しては、課税標準額が本来の1/6になるという特例があります。
更に、この200㎡未満かどうかは、「土地の面積÷その土地の上に建っている住宅の戸数」で判定されます。
1,000㎡の住宅用地を持っていた場合、200㎡以上の800㎡分は課税標準割合が1/3までしか減免を受けられませんが、この土地に10戸の専有住戸がある賃貸アパートないしは賃貸マンションを建設すると、1戸当たりの土地面積は1,000㎡÷10戸=100㎡となり、1,000㎡全てについて課税標準額1/6の割合になります。
つまり、税額も本来の半額に近くなるというわけですね。
この方法をとる場合、①建物建築費の負担が必要になること、②賃貸住宅の需要があって安定した賃貸経営が行えるかどうかの立地条件をその土地が備えているかという見当が必要になることの2つのハードルがありますが、もし条件に合う土地で、建築費を自己資金ないしは銀行借り入れで用意することができ、賃貸需要もあるならば安定した家賃収入を見込めるわけですから、固定資産税の節税+家賃収入というダブルのメリットを得られる可能性があるでしょう。
ただし、サブリース業者にアパート等を建ててもらう、という契約には慎重になるようにしてください。最近は国もサブリース業者への監督を強める姿勢を見せる等していますから、十分検討しないと損をしてしまうことになりかねません。
尚、賃貸向け住宅ではなく、賃貸用店舗・事務所・倉庫等を建築するような場合はこの方法は使えません。小規模住宅用地向け課税標準額の1/6への減免を受けることができないからです。
建築費を準備できないなら土地を誰かに貸してしまうという方法もある
立地条件は賃貸住宅需要がある土地を持っているけれど、建物の建築費を準備できないような場合は土地を誰かに貸して、土地の借主に賃貸マンションを建ててもらうという方法もあります。
これだと得られるのが地代の収入だけになり、自分で共同住宅等を建てて賃貸経営する場合に入ってくる家賃よりも総収入はかなり少なくなりますが、固定資産税の観点から見るとその土地の利用の現況が重要視され、誰がその土地の上に建物を建てて運営しているかということは考慮外ですから、この場合でも小規模住宅用地の課税標準1/6軽減の措置を受けることができます。
【有効活用の例】賃貸住宅需要がない土地の場合
賃貸住宅需要がないような土地ですと、上のように共同住宅等を建築して固定資産税の減免を受けることは難しくなります。
例えば駅から遠く離れた市街化調整区域等の土地や、郊外の土地等です。
このような場合は、山林や畑等でない限り宅地並の課税がされてしまいますから、場合によっては市街化区域内にある土地よりも固定資産税等が高くなってしまうことがあります。
(そもそも市街化調整区域では都市計画税を課税しないとしている自治体も多いですし、土地価格も市街化区域に比べてかなり安いですが…)
このような土地の場合は、ご自分で事業等をしていて有効利用いるような場合は別格として、全く使っておらず遊ばせているなら土地を貸してしまうという方法があります。
郊外の土地でも幹線道路沿いであれば例えば自動車で来店するタイプの店舗であるとか、事業所であるとか宅急便の配送センター等として利用したい業者がいるかもしれません。
また、そうでなくても単に土地だけ借りて資材置き場や平置きの青空駐車場として利用したいという需要もあるかもしれません。
筆者が見てきたケースの一例では、市街化調整区域内の土地ですがその周辺に配送センターがあって駐車場が不足している事業会社が駐車場用地として遊ばせていた土地を借りてくれたというケースがありました。
他にも、ソーラーパネル設置用地として貸して欲しいという問い合わせがあったケースもありました。これは直近ではやや下火になっているようですが、意外な需要もあるものです。
需要がある場合に限りますが、自分で使っていない土地でも誰かが使いたいということはありますから、仲介業者等に相談をして遊んでいる土地を貸して地代収入を得て、その中から固定資産税を払っていくという方法もあるでしょう。
ただし、工業用途で貸す場合は土壌汚染が発生する可能性があるかどうか、土壌汚染が発生する可能性があるならその除去等の手当てはどうするのか、貸す段階の賃貸借契約書でしっかりと取り決めておく必要があります。
そうしないと万一の場合土地の資産価値が下がってしまうということにもなりかねません。
土地を貸す場合の収益構造は?
一般的な不動産投資では、土地と建物を買って建物を賃貸して家賃収入を得るというのが多いでしょう。
この場合の収益構造は、大まかに言って以下のようになります。
- 家賃収入
- 共益費収入
- 敷金等の一時金を預かって運用した運用益
- 更新料等
- 付属の駐車場使用料や自動販売機設置料等
- 減価償却費(ただし減価償却費は現金が出ていきません。土地建物投資の重要な部分ですから、保有期間分の節税として別稿で詳しくお話しします)
- 建物の維持管理費
- 建物の修繕費
- 土地の固定資産税や都市計画税
- 建物の固定資産税や都市計画税
費用の部分を見ていただきたいのですが、減価償却費も維持管理費も修繕費も、その全ては「建物」にかかるものです。土地にかかるのは固定資産税・都市計画税だけです。
つまり、土地を貸す場合は貸主が負担する費用は原則としては土地の固定資産税・都市計画税だけで、極めて費用が少ないという特性があります。
もちろん家賃収入に比べたら地代の収入はかなり低いですから、土地の利回りというものも建物の利回りに比べて低い(令和元年時点の粗利回りは東京都内で土地は0.5%~3.0%くらいのレンジです)ですが、遊ばせておくよりは良いでしょう。
なお、一般的な市場調査の結果で公的にオーソライズされたものではありませんが、東京都の地代の水準はおおよそ以下のとおりという調査結果も出ています。
- 住宅地:固定資産税・都市計画税の3~7倍
- 商業地:固定資産税・都市計画税の3~5倍
住宅地の倍率が高めになっているのは、先にお話しした通り住宅地は建物次第で固定資産税課税標準額の1/6への減額があるため固定資産税・都市計画税額が低くなるからです。
もちろん地代水準を検証するうえでの一方法にすぎませんし、例えば地方の幹線道路沿いのイオン等、大型ショッピングセンターに事業用の土地として貸す場合はこれよりずっと高い地代も見込むことができますが、大まかな目安として、ということで見て下さい。
まとめ
固定資産税を節税する方法は、基本的には「共同住宅等を建てて小規模住宅用地の課税標準減額」を使うくらいしかありません。
もちろん最終的な所得税等との兼ね合いもあるのですが、固定資産税は「節税」を考えるよりは上に示すような例で土地の「有効活用」を考えた方が前向きな気がしています。