分社化による節税

分社化による節税は、主に分社して資本金の金額を小さくし、中小法人にのみ認められた法人税の優遇措置を利用することです。軽減税率の適用があるほか、交際費の損金算入限度額の適用があります。

意外なところでは、人事異動に伴う退職金支払いによる節税も可能です。

目次

中小法人とは

法人税法の優遇措置の適用を受けることのできる中小法人とは、期末時点の資本金または出資金の額が1億円以下の法人です。ただし、資本金または出資金の額が5億円以上の法人が完全支配する法人は除外されます。

さらに、ややこしいことに、税務上、中小企業者という言葉もあり、こちらは資本金または出資金の額が1億円超の法人に2分の1以上所有されていると当てはまらないなどの要件があります。中小法人に該当するには、そこまで厳しい条件はありません。

中小法人の軽減税率と交際費の損金算入

中小法人の優遇措置の第一は、軽減税率です。800万円以下の課税所得には18%の軽減税率が適用されます。中小法人に該当しない場合は23.2%であり、法人事業税という地方税にも少々仕組みは異なるがやはり軽減税率の適用があります。

法人税法上、交際費の損金算入限度額は800万円とされています。800万円を超えた交際費は経費になりません。中小法人でなければ、交際費の全額が経費にならなくなってしまうでしょう。

中小法人の損金不算入限度額を利用するだけでなく、分社化した会社をすべて中小法人にすれば、分社の数だけ損金算入限度額を増やすことができます。

人事異動に伴う退職金支払い

分社化すれば、通常部門間の人事異動の際、退職金を支払うことができます。支払った会社の側で退職金を経費に落とすことができるほか、本人は2分の1課税という退職所得の特別控除の適用を受けることができます。

ただし、本人には退職金の算定基礎となる勤務年数がリセットされてしまうというデメリットもあります。また、移籍後の会社に支払うと、預り金経理はできず、収益に計上しなければならないことにも留意する必要があります。

資金移転の際には配当の益金不算入を利用

子会社から親会社への資金移転の際には、配当金の支払いという形式をとれば、法人税法上の配当の益金不算入制度を利用することができます。益金不算入制度は、親子関係によって完全子会社であれば全額、3分の1超を有している関係法人であれば配当から負債利子を差し引いた金額が、益金に算入されないとされています。

安易に資金を移転すると、貸付金とみなされ、みなし利息課税されたり、寄付金と認定されたりする可能性があるので、分社化の際には資金移転がある程度拘束されることを念頭に置いておくべきでしょう。

まとめ

分社化をして中小法人にのみ認められる優遇措置を受けることができます。主に軽減税率の適用と、交際費の損金算入限度額を増額させることが節税となります。人事異動に伴って節税が可能となるのも魅力です。

ただし、資金移転の際には子会社から親会社への移転には配当の益金不算入制度が利用できますが、その他の場合では税務上ある程度条件拘束されることに注意しましょう。

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