規模の大きい土地(かつては広大地評価)の平成29年改正により、かつては広大地評価の適用ができない土地であったが今では規模の大きい土地の評価の適用が認められるようになった土地、またその逆も生じています。
規模の大きい土地の評価方法の適用ができるか否かで相続税評価額は大きく変わり、その結果相続税額も大きく変わりますから、この点をみていきましょう。
平成29年改正により規模の大きい宅地として評価できるようになった土地
平成16年改正の広大地評価の適用要件と、平成29年改正の地積規模の大きな宅地の評価の適用要件の違いにより、従来は広大地に該当しなかったけれど、現在では地積規模の大きな宅地には該当するようになった土地の例を以下に示します。
尚、特段断りのない場合、地域的な要件は満たしているものとします。
①奥行がさほどなく、宅地開発するに当たって開発道路を必要としない土地
(三大都市圏では500㎡以上、その他の地域においては1,000㎡以上の土地)
以下の図のように、開発道路を入れなくても分割後の全ての土地が道路に接するように分けられる土地のことです。カマボコ状に切ることができる土地、路地状開発が可能な土地等と言ったりします。
これは、平成29年改正で地積規模の大きな宅地の要件として、かつての「開発道路を必要とする土地」の要件がなくなったため、適用可能となりました。
②国道等の幹線道路沿いの店舗、営業所、倉庫等の敷地
国道等の幹線道路沿いの土地は、店舗・営業所等の敷地として一体利用を前提に売買されるため、旧来は広大地評価を適用することはできませんでしたが、平成29年改正で規模の大きい土地の要件に「マンション適地等に該当しない」こととする要件が削除されたため、適用は可能となります。
③現況3階建以上の賃貸マンションの敷地
かつての広大地評価における「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものを除く」における「中高層の集合住宅等」とは3階建以上の共同住宅であるとされていたため、現に宅地として有効利用されている敷地に該当すると判断され、広大地評価が否認されるケースもありました。
しかし、平成29年改正の敷地規模の大きな宅地の評価では、現状評価対象地上にどのような建物が建っているかは考慮しないことになっていますので、適用可能となります。
④駅周辺や最寄駅の徒歩圏内に所在する土地
※④は他に三大都市圏で規模500㎡以上、三大都市圏以外の地域においては規模1,000㎡以上の土地で、かつ東京23区では指定容積率300%未満、東京23区以外では指定容積率400%未満の土地という条件も必要です。
かつての広大地評価では、このような土地はマンション適地と考えられる可能性があり否認や広大地評価の適用対象外とされるケースもありましたが、平成29年改正の地積規模の大きな宅地の評価では、この要件は容積率によって分ける画一的な要件へと変更されたため、周辺の不動産市場や地域の状況から見て明らかにマンション適地であったとしてもして容積率の要件を満たすのであれば、地積規模の大きな宅地の評価の適用が認められることになりました。
まとめ
以上①~④の例は、いずれもかつて広大地に該当するか否かについて国税不服審判所等で実際に争われた論点ばかりです。
これらは、平成29年改正の地積規模の大きな宅地の評価では従来の広大地評価に比べて適用要件を明確化し、また大幅に緩和したため、改正後適用可能になったものです。
実際に相続税申告の際の相談を受ける感覚で言うと、適用対象として認められる土地は従来の評価制度に比べて倍以上には増えているのではないかと思われます。