節税対策の第一歩は税制の仕組みを知ることだと思います。そこで、ここでは法人税の基本的な仕組みをご紹介します。
誰が法人税を支払うのか
法人税は、法人に課せられます。ここでいう法人は、株式会社や合同会社だけでなく、協同組合等でそれぞれの設立根拠法で法人とされているものを含みます。
匿名組合や民法上の組合には納税義務はありません。また、公益法人等の一定の法人については、営利事業を行う場合のみ法人税を支払う必要があります。ちなみに公共法人については法人税を支払う義務がありませんので、NHKなどは法人税の納税義務がないこととなっています。
どうやって法人税を計算するのか
法人税は法人の所得(=利益)に対して課せられます。また法人税の税率は現在23.2%となっていますが、これ以外にも所得に対して課せられる地方税(法人税事業税や法人県民税等)がありますので、その実質的な税率は、資本金1億円超の大企業であれば約30%程度になっており、中小企業であれば、34%前後となります。
大企業の方が税率が低いと思われた方もいらっしゃると思いますが、大企業はこの所得に対して課さられる税金以外に、その人件費や規模等を基礎に課せられるいわゆる外形標準課税をこれ以外にも負担をしているため、所得に対する税金は低くなっています。
どうやって所得を計算するのか
実は、法人税の計算は所得税に比べて非常にシンプルです。個人の所得税の計算は10種類の所得に分類して行われます。例えば、給与所得や、配当所得、不動産所得等です。
個人はこの所得ごと合算や個別に所得を計算して税金を計算するためやや複雑です。これに対して、法人税はどのような種類の収入であれ法人の益金、逆にどのような種類の費用であれ法人の損金として計上し、益金と損金の差額により所得を計算します。
つまりなんでもかんでも同じバスケットにいれて計算をするイメージです。ちなみに法人税では、所得とは利益の概念で、利益のプラスになるものを益金、利益のマイナスとなるものを損金といいます。企業の会計でいうところの収益が益金、費用が損金となるイメージです。
いつ法人税の申告を行うか
法人税の申告は決算日後2か月以内に行う必要があります。ただし、一定の法人は税務署に届け出ることによって3か月以内の申告が認められる場合があります。
いつ法人税を支払うのか
法人税は決算日後2か月以内に支払う必要があります。この期限に遅れた場合は、延滞税という罰金が科せられます。また、申告期限が3か月の法人でも税金は2か月以内に支払う必要がありますのでご注意ください。
どのような節税手法があるか
それでは法人税の節税手法にはどのようなものがあるのでしょうか。繰り返しですが、法人税の所得の計算の仕組みは個人と違うので、個人の所得税のように、それぞれの所得の計算方法や税率の違いを利用した節税を行うことはできません。
従って、法人税の節税は大きくは、税金の繰延を行うことと、特例や法律間の適用の違いを利用するといった方法になると思います。
それでは税金の繰延とはどのようなものになるでしょうか。
例えば、生命保険を活用して、退職金の準備をしましょうと税理士や保険会社から提案を受けた経営者の方々はたくさんいると思います。
退職金準備のための生命保険は、通常は支払った保険料の半分を損金とし、経営者が退職する時に、その保険を解約し退職金として払い出します。
この場合、短期的に見ると、保険料が損金になるので、税金は少なくなりますが長期的に見ると、損金となった部分については解約した時に益金になります。
損金と益金で差し引きゼロ。税金の総額は変わりません。生命保険や倒産防止共済などは、長期的に見ると今払うべき税金を将来に繰り延べているだけのように見えます。それではなぜこのような節税策が広く普及しているのでしょうか。その答えは後程説明します。
他方、特例や法律間の違いなどを活用する節税とはどのようなものになるでしょうか。例えば、国の政策上、人件費や雇用者を増やした場合や特定の機械など設備投資を購入すると税金を少なくしてくれる特別な制度が存在します。
また、法人税と所得税の税率の違いを利用して、役員報酬を適切に設定しトータルの税金を少なくする方法もあります。また、賃貸契約の家に住んでいる方であれば、賃貸契約を会社契約にして、社宅扱いにし、法人では支払った金額を損金とし、個人では所得から除外してトータルの税金を安くする方法もあります。これらの方法は、繰延ではなく、いわば永久的に税金を少なくすることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。法人税の仕組みは意外とシンプルですので、まずはその外観を理解したうえで節税対策を行うことも大事なことかと思われます。