今回は、社宅を利用した節税について紹介したいと思います。
ご存知の通り、社宅は企業等の雇用主が従業員のために住居を借り上げるなどした上で、それを従業員へ貸与する制度です。それではなぜ社宅を利用することが節税になるのでしょうか。
ポイントは一定額までの企業の負担については従業員に対する給料と違って従業員サイドで所得税が課せられないことにあります。以下で、その詳細についてご説明させていただきます。
社宅を利用した最大限の節税方法
まず、会社名義で社宅を契約すると当然ですがその家賃は会社の損金とすることができます。
しかし、全額を会社で負担してあげるということはお得ではありません。家賃の全額を会社で負担をしてあげるとそれは給与を同額増やしていることと同じことになるので、それでは従業員の方で給与として課税されてしまいますし、会社としてもその分の社会保険料の負担をしないといけません。
これでは会社の損金にはなっても、従業員の給与が増加しますので所得税・住民税、社会保険料がその分発生してしまい、逆に負担が増加することもあります。それではどのような方法を使用すればいいのでしょうか。
答えは、実際にその社宅に居住する従業員からから月々一定額の家賃以上を徴収することです。そうすることで、給与として課税されなくなりまし、社会保険料の対象ともならなくなります。
この一定額の家賃は、固定資産税評価額を基に計算するのですが、通常は実際の家賃と比べてかなり低い金額になることが多いです。計算結果が実際の家賃の1割~2割程度となることも良くあります。
例えば、実際の家賃が5万円だったとしても、固定資産税評価額から計算した一定額の家賃が1万円だったとすると1万円以上を徴収すれば給与として課税されないことになります。
社宅を節税で利用する場合の計算/算出方法
ちなみにこの金額の計算は固定資産税評価額が必要となるのですが、借主から固定試案税評価額を取得できないためざっくりと家賃の半分程度を従業員から徴収しているケースも多いかと思います。
ここで一点、皆様結構勘違いをしている方も多いのですが実は固定資産の評価額は所有者だけでなく借家人でも市役所等で閲覧することが可能となっていますので、ぎりぎりの水準で従業員の負担分を設定したい場合にはご自身で固定資産税評価額をお確かめください。
なお、この金額の計算は役員と従業員で異なっており、役員の場合、豪華な社宅等に関しては上述の算式の適用はない等いくつか注意すべき点があります。
詳細は以下の国税庁のWebsiteのリンクも御確認下さい。
役員:https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2600.htm
従業員:https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2597.htm
では、さらに詳しくご説明します。上記のような方法で社宅制度を導入すると何が起きるでしょうか。これは従業員個人のサイドから見ると、実質的に手取りの4万円増加です(家賃負担が5万から1万になるため)。通常、給与を4万円増加させると、所得税・住民税・社会保険料もそれに合わせて増加しますので、手取りの増加は4万円より少なくなってしまいます。しかし、社宅とすることにより、追加の税負担なしで手取りを多くすることが可能となるのです。なお、一定額の家賃未満しか徴収しないと、会社で負担した分が給与として課税されてしまうので注意しましょう。
逆に言えば、従業員の手取りを4万円増加させたい場合は、給与として増加させると、その給与に税金や社会保険がかかりますので、4万円以上の支出が生じるのですが社宅として4万円の負担をすればそれ以上の支出は生じないのです。
節税で社宅を利用する場合の注意点
給与の内訳の中に住宅手当というものがあります。しかし、これはただの給与として課税されてしまいます。社宅はあくまで会社がその住居を実際に借りて従業員へと賃貸を行う必要があります。
また、所得税と住民税に加え社会保険料の負担は減るとお伝えしました。この点、社会保険料のうち厚生年金に関しては、高い金額で掛けておいた方が将来受け取る年金の額が増加します。
また、失業手当を受ける際にも給与の額を基準に算定されますので、給与として出しておいた方が受け取れる金額は増えます。そのようなデメリットも若干存在するのですが、社宅制度を導入している会社は多いと思われますので、通常はメリットの方が多いのではないかと思われます。
まとめ
社宅で節税になるのは、役員や従業員から収受する一定額の家賃が実際に支払う家賃と比べて著しく低いことがそのポイントです。社宅を利用することで役員の節税対策にもなりますし、より小さい支出で従業員への福利厚生にもなります。まだご利用されてない方は一度ご検討されるといいと思います。