ここでは欧米のグローバル企業が行っている節税策をグーグルのスキームを例にとって説明をさせていただきます。
グーグルなどの多国籍企業が用いる典型的な節税策に「ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチ」と呼ばれるものがあります。この節税スキームは、グーグルのみならず多くの多国籍IT企業がこの節税策を利用していました。
名前の由来なのですが、アイルランドにおける2つの子会社を利用し、この子会社間の取引にオランダの子会社を挟むスキームなので、「ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチ」と呼ばれています。
では、具体的にこの節税法を紹介します。
① アメリカのグーグル本社は、アイルランドのグーグル・アイランド・ホールディングス(GIH)に海外でのビジネスライセンスを供与します。
② GIHは、当然、ライセンス使用料をアメリカ本社に支払います。
③ ところが、グーグル・アイランド・ホールディングスは、タックスヘイブンである英領バミューダー諸島で登記されている会社が管理しています。このため、アイルランドでの法人税はゼロとなります。なぜなら従来アイルランドの税制では管理支配が国外で行われている企業について法人税は課税されていなかったのですまた。英領バミューダー諸島は、モナコなどと同様、完全無税のタックスヘイブンになります。
④ GIHは、同じアイルランドに存在する存在する子会社グーグル・アイルランド・リミテッド(GIL)にサブライセンスを供与します。アメリカ国外のすべての事業の収入はこのGILに集まる仕組みになっています。
⑤ GILは、オランダのグーグル・ネザーランズ・ホールディングスBV(GNH)にライセンス料を支払います。このオランダのGNHが、GIHを支払います。
⑥ なぜGILは、GIHに直接、ライセンス料を支払わないのでしょうか。それは、アイルランドからオランダに対するライセンス料の支払いには、源泉税が徴収されないからです。アイルランド=オランダ間では、ライセンス使用料を含むロイヤルティー(特許権使用料)の支払いには源泉税がかかりません。ロイヤルティーの非課税が、租税条約によって決まっているのです。
⑦ GIHは、アメリカのグーグル本社にライセンス料を支払います。しかしこの額が巨大になってしまっては、グーグル本社がアメリカで高い税率を課税されることになるので意味がありません。そこで、グーグルの海外事業の利益の大部分は、アイルランドにあるGIHに蓄積されるようにライセンス料の額を設定します。
このようなスキームを使用してグーグルが節税した金額は何千億円にもなると言われています。
どうでしょう。欧米のグローバル企業は税金もコストという思想があり、積極的な節税策を行っているんですね。このような大規模な節税が問題となったことから例えば、今後はアイルランドで設立された企業は管理支配地に関係なくアイルランドで課税される事になったり、また多国籍企業の節税を防止するための多国間の枠組みが構築されつつあります。
また、直近ではアメリカで法人税の大規模な減税が実施され、オフショアを利用した節税のモチベーションがより下がるような多国間の法人税率の引き下げ競争も過熱しています。
しかし、古来よりルールの制定と新しい抜け道の探索はイタチごっこのようなものですのでまた新たな節税スキームが生まれるかもしれませんね。