【相続税申告時の土地評価】間口奥行・接面道路について

実際に相続税申告時、税理士によって土地が評価される時どのような流れで評価されていくのか見ていきましょう。

税理士が相続税申告のための土地評価を行う場合、「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」という書式を使用します。

この書式に沿って説明しますので、以下のURLをご参照いただきながらお読みください。

土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表)

また、財産評価通達における様々な別表を参照しながら定性的に評価をしていくのがこの評価方式ですので、たくさんの表を参照する必要があります。全ての表を掲載すると煩雑になってしまうので適宜リンクを貼らせていただきますから、リンク先をご参照の上ご確認ください。

目次

地区の区分について

これ以降の説明では、その土地が相続税財産評価上、どういう地区に指定されているのかということを理解しておく必要があります。

例えばビル街地区なのか、繁華街地区なのか、普通住宅地区なのかといったようにです。

こちらは国税庁の財産評価基準書のホームページから路線価図を見ると、上部にその路線の地区区分が記載されているのでそれに従ってください。

奥行価格補正について

奥行価格補正については、財産評価通達付表1のとおり定められています。

例えば、以下のような土地を見てみましょう。
【図1】

この土地は、前面道路の相続税路線価が100,000円/㎡、奥行12mの土地です。ここで、財産評価基本通達付表1から一部を抜粋すると、奥行12mの土地は

  • ビル街地区 0.91
  • 繁華街地区 1.00
  • 普通住宅地区1.00

の補正率となっています。この補正率を前面道路の相続税路線価にかけて奥行価格補正率を算出するので、

ビル街地区 100,000円/㎡×0.91=91,000円/㎡
繁華街地区・普通住宅地区 100,000円/㎡×1.00=100,000円/㎡

以上のように算出します。

この奥行価格補正の基本の考え方は、土地の奥行きが長くなり過ぎると、その土地の利用効率が下がってしまうという考え方に基づいています。

例えば、商店街等のお店をイメージしていただきたいのですが、奥行があまりにも長いと、お店にお客さんが入った後、中々店の奥まで来てくれないから奥の方は倉庫等として使わざるを得なくなり、直接的に売り上げに貢献できない床になってしまう等という考え方です。

これを財産評価の便宜上、不評1のようにある程度定式化して求められるようになっているわけです。

間口狭小・奥行長大補正率について

財産評価通達ではやや番号が飛んでしまいますが、上記リンクの内付表6の間口狭小補正率表、付表7の奥行長大補正率表をご覧ください。
これについても付表1の奥行価格補正と似たような考え方になっていますから、こちらで解説します。

間口狭小とは文字通りの意味で、土地の間口(道路に面している長さ)が狭いために建物の配棟等のレイアウトが難しくなったり、商業地であればお客さんを入れるのが難しくなったりするために利用効率が劣るという考え方に基づいています。

奥行長大とは、間口に対する奥行の比率(奥行の長さ÷間口の長さ)で求められる指数で、これも間口が狭いのに奥行が長い土地は通常利用効率が劣るでしょうという考え方に基づいています。

以下の図2を見ていただくと、どちらが使いやすそうな土地なのかは直感的にお分かりいただけるかと思います。
【図2 間口狭小・奥行長大のイメージ】

左側の土地は間口10m、奥行10mで、奥行/間口の比率は1.00になりますから、特段の補正はありません。右の土地は間口4m、奥行20mで、奥行/間口=5.00です。

ここで、この土地が普通住宅地区にあるものとして、付表6と付表7をご覧ください。右の土地は付表6間口狭小補正率表では、普通住宅地区4m以上6m未満で0.94、付表7奥行長大補正率は5以上6未満で0.92となっています。さらに、前段で説明した付表1奥行補正の表では普通住宅地区1.00で、奥行補正はありません。

そのため、この土地の路線価が100,000円/㎡とすると、右の土地の奥行補正・間口狭小補正・奥行長大補正を行った価格は、以下のように求められます。

100,000円/㎡×1.00(奥行補正)×0.94(間口狭小)×0.92(奥行長大)=86,480円/㎡

このように、土地の各種補正はそれぞれ掛け合わせて適用するもので、足し合わせて適用するものではありませんので、注意してください。

ここまでが、冒頭でリンクを貼った土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表)のうち、「自用地1平方メートル当たりの価格」欄の1と5-1の欄の適用方法になります。

接面道路による補正

付表の参照番号は付表2~3になります。一方でしか道路に面していない土地よりも、角地や二方路地の方が利用しやすいということはお分かりいただけるかと思います。

特に角地や二方路地、三方路地、四方路地は建蔽率のボーナス+10%(防火地域内の商業地域等は建蔽率が100%)があり、方位によっては住宅地でも日影規制をクリアしやすくなる等アドバンテージがありますから、価値は通常高くなります。

その部分を考慮しようというのが接面道路による補正で、相続税評価上は側方路線影響加算(角地の場合)、二方路地影響加算等と言います。

この方法による場合の角地の計算例を以下の図3で考えてみましょう。この土地は普通住宅地区にあるものとします。

【図3 側方路線影響加算の例】

土地及び土地の上に存する権利の評価明細書の自用地1㎡当たりの価格の2をご覧ください。

ここのAは、1.で計算した正面路線価×奥行価格補正の数値が入ります。正面路線価はその土地が面している道路のうち、最も高い価格が設定されている路線価のことですから、この例では1,000,000円/㎡です。そして、側方路線価はこの例では西側の500,000円/㎡です。

次にそれぞれの道路から見た奥行補正のみを考えます。
南側の道路から見ると、この土地は奥行30mです。付表1を見ると、普通住宅地区で奥行30mは0.95ですから、

1,000,000円/㎡×奥行補正0.95=950,000円/㎡…(A)

となります。

次に、西側の道路から見るとこの土地は奥行10mです。付表1を見て、普通住宅地区は奥行10mで1.00です。
更に付表2の側方路線加算、普通住宅地区を見ると角地0.03ですから、

(側方路線価)500,000円/㎡×奥行価格補正1.00×側方路線影響加算率0.03≒15,000円/㎡

と求められます。

これと、上記(A)の950,000円/㎡を足した価格、965,000円/㎡が評価明細書のBに入る価格となります。

三方路、四方路では、評価明細書C、Dで上記側方路線加算と同じ手順を繰り返していきます。

まとめ

ここでは、間口奥行・接面道路による相続税路線価評価の方法をお話ししました。冒頭にリンクを貼った評価明細書の右欄ではA~Eまでの欄の計算にあたります。

このように、相続税路線価評価は付表を参照しながら評価対象地の各数値を定型的な計算式に当てはめていけば評価できるようになっています。

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