固定資産に設備投資した支出は、減価償却によって繰り延べて費用化しなければなりません。
しかし、税務上支出したタイミングで費用化が認められているものもあります。これらを有効利用して節税するのは、金額も大きいので節税の王道と言えます。
プロでも頭を悩ます難しい点もあり、税務調査でも必ずチェックされるポイントでもあるので、きっちり理解して間違った節税をしないようにしたいものです。
取得価格か経費か
固定資産の取得に要した費用は、取得価格に含めるのが原則です。引取運賃や荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などは、取得価格に含めて減価償却によって費用化を繰り延べなければなりません。しかし、税務上、次に掲げる費用は取得価格に含めず、取得した時に費用化することが認められています。
- 固定資産の購入にかかる借入金利息
- 割賦購入した固定資産の利息
- 租税公課
- 契約解除のための違約金
- 計画変更等による支出
取得価格に含めず経費化できる費用は、あくまでも上記のもの限定ですので、注意が必要です。
資本的支出か修繕費か
固定資産を修繕した時の支出は、すべてが修繕費として費用計上できるとは限りません。その固定資産の価値を高めるための支出とみなされれば、資本的支出として資産計上し、減価償却によって費用化を繰り延べる必要があるのです。
この資本的支出になるか修繕費として費用計上できるかの判定は、プロでも難しい微妙な判定です。一般的には、次のようなフローチャートによって判定します。
- 20万円未満か3年以内の周期 →当てはまれば修繕費。当てはまなければ②へ
- 明らかに価値を高める支出 →当てはまれば資本的支出。当てはまなければ③へ
- 維持管理・原状回復の支出 →当てはまれば修繕費。当てはまなければ④へ(以下同様)
- 60万円未満か前期末取得価格の10%以下
分かりにくいので例を挙げると、不動産賃貸業を営む事業者が賃貸用アパートの防水工事を100万かけて行ったとします。この支出は修繕費でしょうか、それとも資本的支出でしょうか。
まず、①には当てはまらないので、②の判定に行きますが、特殊な防水工事でない限り、②ではないと言えます。そこで③の判定になりますが、ここで維持管理のための支出とみなされる可能性が高くなります。
③の判定で迷ったとしても、④の判定で、賃貸用アパートの取得価格が1000万円以上であれば、取得価格の10%以下判定で修繕費となります。
少額減価償却資産の特例の利用
取得価格が10万円未満の少額減価償却資産については、取得した時に全額費用化が可能です。さらに、中小企業者に該当すれば、取得価格が30万円未満の減価償却資産について、取得した時に全額費用化が可能です。中小企業者とは、主に資本金1億円以下の法人、個人事業主を言います。
まとめ
減価償却せずに節税する際には、取得時に経費にできるかどうか、がポイントと言えます。付随費用として経費にできるのか、修繕費として経費にできるのか、税務上の要件をしっかり確認して節税したいものです。