節税に関してよくある疑問に『赤字会社を買って節税はできるのか』というものがあるかと思います。確かに、赤字会社、すなわち税務上の繰越欠損金が多額にある会社を購入してその会社に利益を移せば節税になりそうな気がします。
しかしこのような行為を防止するため、赤字会社を購入して新規に事業を開始する場合などは、その赤字会社の繰越欠損金は使えないようになっているのです。
この他にも留意すべきポイントがいくつかありますのでこちらの記事では赤字会社の購入で留意すべきポイントについて一つずつご紹介させていただきます。
赤字会社の購入で留意すべき3つのポイント
赤字会社購入で留意すべきポイント1. 『繰越欠損金の使用制限が課せられる』
先ほどご説明した部分となりますが、赤字会社を購入しての節税を防止するため、株主の50%超に変更があった場合において5年以内に以下の行為が行われた場合はその赤字会社の欠損金が使えなくなるのです。
- 赤字会社が休眠をしている場合、買収後に事業を再開すること
- 赤字会社が買収後に事業を廃止して、多額の資金調達をすること
- 株主等が赤字会社の債権をディスカウント購入し、多額の資金調達を行こうこと
- 赤字会社が一定の合併を行うこと
- 赤字会社の役員がすべて退任し、従業員の20%が退職し、新事業の規模が一定の規模となること
つまり、赤字会社が従前行っていた事業を行うつもりがないにも関わらず、繰越欠損金の使用だけを目的として赤字会社を購入することを制限することがこの制度の趣旨です。
しかし逆に言えば上記に該当しなければ赤字会社を購入してもその欠損金は使えるのです。
例えば赤字休眠会社を購入して5年以内にその赤字休眠会社が新事業を開始しなければ欠損金は使えますし、資金調達等なしで既存事業を立て直す場合には当然に繰越欠損金の使用は制限されません。そのため、経済合理性のある範囲内で買収会社の事業のうち一定のものを赤字会社に移すのもありかもしれません。
赤字会社購入で留意すべきポイント2. 『簿外債務』
赤字会社を買うことは、帳簿に記載されてない債務(簿外債務)も引き継ぐことになりますし、そもそも帳簿に記載されている資産や負債も確かなものか検討する必要がありますので、そのようなリスクと節税効果を見比べて損得を判断する必要があります。
赤字会社購入で留意すべきポイント3. 『偶発債務等』
上記とも似通っているのですが、赤字会社のみならず既存の会社を購入するということは、既存の事業に関する訴訟等で現在発生はしていないものの、将来的に発生する債務を実質的に引き受けることとなる可能性もあります。このリスクは発生した場合、相当のインパクトがある場合がありますので、少額の税金の節税メリット程度が一瞬でふっとんでしまう可能性があります。
赤字会社の購入で留意すべきポイントまとめ
いかがでしたでしょうか?ここでは赤字会社を買う際に留意すべきいくつかのポイントをご説明させていただきました。
M&Aや事業承継が世の中的にはブームになりつつありますが、赤字会社を購入する場合には留意をすることが大事になります。