役員給与は、一定の要件を満たさないと税法上、経費(損金)に算入できないことになっています。
一定の要件とは一般に、下記の種類ごとに決められています。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 利益連動給与
それぞれの要件を正しく理解し、節税につなげることが重要です。
定期同額給与とは?
定期同額給与とは、「支給時期が1カ月以下の期間で、各支給時期における支給金額が同額であるもの」をいいます。いわゆる通常の毎月支給される給与がこれに該当します。しかし、役員給与の場合は、原則、不定期の改定は認められません。
役員給与を改定する場合には、期首から3カ月以内の株主総会で決定して経費に落とすことになります。たとえば、3月決算の会社であれば4月と5月の役員報酬を50万にし、6月から翌年3月までの役員報酬を100万に改定するということが可能です。
よく誤解されますが、期首から3カ月以内に改定しなかった場合、期中のいかなる役員給与の改定も経費に落とせなくなるわけではありません。昇格など職制上の地位の変更による増額であれば、期中であっても増額後の役員給与を経費に落とすことができます。ただし、利益調整と認められるような増額の場合、否認されますので注意が必要です。
また、社宅家賃の補助、グリーン車の通勤定期など、経済的利益の供与の場合も、各支給額が同額であれば損金算入が可能です。
事前確定届出給与とは?
役員給与の経費算入は、定期同額の場合のみ認められるわけではありません。「事前確定届出給与」といって、株主総会等で各役員に、所定の時期に確定額を支給する旨を定めて所轄税務署に届け出れば、経費に算入することができます。
事前確定届出給与の注意点は、事前に届け出た通りの金額を支給日に支払わなければ、全額が経費に算入できないことです。200万支給すると届け出て150万支払った場合、超過分の50万が経費として否認されるのでなく、支払った150万全額が否認されます。これは、たとえ支給額が届出額を下回った場合も同じなので、注意が必要です。
事前確定の届出の期限は、事前確定届出給与に関する決議をした株主総会等の日から1カ月を経過する日と、会計期間開始の日から4カ月を経過する日のいずれか早い日となっています。
不相当に高額な役員給与は注意!基準はどの辺?
上記の条件を満たしていた場合でも、経費算入を否認されるケースもあります。それが、不相当に高額な役員給与の否認の規定によるものです。
実質基準と形式基準によって判断され、実質基準とは、同規模の同業他社の役員給与の額によるものと考えればよいでしょう。
役員の職務の内容・従事の程度、会社の収益の状況や、使用人に対する給料の支給状況も考慮されます。実質基準による否認は、近年、某酒造メーカーの役員給与の否認の根拠となり、注目されました。そのため2019年7月時点であまりにも高額な役員給与は、当局に目を付けられ易いので注意すべきです。
形式基準は、株主総会等の決議または定款の規定による限度額内であるかどうか、ということです。役員全員の総額の限度額を定め、その範囲で支給して経費に落とすのが効果的な方法といえます。
まとめ
役員給与を経費に落として節税したい場合、税法上、細かい制限があるので、十分留意して節税すべきです。役員給与で利益圧縮・利益調整を図るつもりが、否認されてその分の法人税を追徴されることになりかねません。