贈与税の時効について判例を用いて1から解説!税務署の対応はどう?

税金にも時効というものがあります。

良くテレビニュース等で聞きますが、「刑事事件の犯人が一定期間捕まらないで逃げたら罪に問われなくなる」という制度ですね(実際は刑事の場合そんなに単純ではありませんが…)。

実は贈与税にも時効が定められており、一定期間を過ぎると税金を払わなくて良くなるという規定がされています。

えっ!もしかしたら自分も?と思った方、いやいや、現実はそうは甘くありません。

今回は贈与税の時効について詳しくまとめます。

目次

贈与税の時効の原則

贈与を受けて申告しなかった場合、申告がなくても税務署が独自に調べて税額を決定して課税されることになっています。

しかし、申告期限後6年を経過するとこの決定ができなくなります。

贈与税の申告期限は贈与のあった翌年の3月15日ですから、贈与の翌年の3月15日から起算して6年を過ぎたら、それ以前に贈与があったことが分かっても贈与税を課税されることはなくなります。

ただし、贈与のあったことを隠したりしたような場合にはこの期限が7年に延長されるようになっています。

具体的に解説しましょう。

時効の期間の起算点はいつか

時効の起算点は贈与の時期とされています。いつ贈与があったとみなすのか、それによって時効によって贈与税課税の決定ができなくなる時期が変わってきます。

その一方、贈与契約は民法にも定められている契約ですが、「贈与する人が相手にこれを贈与しますという表示をして、贈与を受ける人が了承することによって」成立し、必ずしも契約書を取り交わす必要がありません(契約書等を取り交わさない贈与を法律用語では「書面によらない贈与」と言います)。

しかし、書面によらない贈与は、実際に贈与を行って相手が受け取るまではいつでも取り消すことができると民法に決められていますから、贈与が確定するのは以下の2時点のうちいずれかです。

  1. 贈与契約書等を作成し、その契約の効力が発生すると記載されている日(書面による贈与)
  2. 書面によらない贈与の場合は相手方が受け取った日

住宅等の土地建物については、実際に物件を引き渡し、所有権の移転の登記をすることで「相手方が受け取った(贈与の履行をした)」と言えます。

しかし、日本の不動産関連法規において、登記はただ権利を保護するためだけであり、登記がないからと言って必ずしも贈与の履行がなかったとは言えません。

かつてあった脱法行為

これを逆手にとって、贈与契約書を作成してその効力が発生した日が贈与のあった日だという主張はできないのでしょうか。
土地・建物を贈与して、所有権移転登記をしないでおいたらどうでしょう。

登記を移転すれば税務署には分かるようになっていますから、申告しなくてもすぐに課税されます。
一方、公正証書はあくまで個人間の契約を公証役場が証明しますというものですから、税務署には申告しなければ分かりません。

そこで、公正証書を作成し、土地・建物を目立たないように引渡を完了し(この時点で法律の原則から言えば贈与の履行は成立します)、登記をせずにその翌年の3月15日から数えて6年を経過した後、公正証書にある贈与の効力発生時点にさかのぼって所有権移転登記をしてしまうという方法です。

これですと、税務署が登記移転(贈与があったこと)を知ったとしても、時効の期間が過ぎているわけですから課税されないとも考えられます。

しかし、これで時効を主張することは難しく、やはりできません。

国税不服審判所の裁決において、当然ながらこれは否定されています。

理由付けとしては相続税の時にもお話ししましたが、「本当に贈与をする意思があって贈与したのであれば、土地建物については一般的に登記の移転をするはずであるし、登記移転をして困ることもない。よってこの公正証書は単に文書を作っただけで実際には作成時点で贈与はなかった。時効の起算点は登記移転日である」とされました。

まとめ

いずれにしよ、時効という制度は本来「気付かないで長期間が過ぎた場合、その期間の間に権利関係も安定している。当事者に不穏な意思もない。では、その長期間の間に認められるにいたった関係を重視し、過去のことは問わないでおきましょう」という制度ですから、わざと行うことは難しいということですね。

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