融資を受ける際、個人の属性も重視されて融資の可否や融資額が決定されると説明してきました。
しかし、属性は一朝一夕に高められるものではありません。給与所得を劇的に増やすことはなかなか難しいですし、専業主婦で特段収入がないという方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合、日本政策金融公庫(以下、単に「公庫」と記載します)の利用を考えてみると良いでしょう。
日本政策金融公庫とは
公庫は、日本政府が100%出資している金融機関です。
アパート購入費用やリフォーム費用等の一般的な不動産投資のための融資のほか、太陽光発電システム設置費用等への融資も行っています。
元々は民間の金融機関を補完する役割を担うという目的で設立されています。
公庫を利用することで、信用力に乏しい中小企業や個人事業主に対して比較的低金利で貸し出しを行っています。
条件さえ満たせば専業主婦の方でも融資を受けられますので、検討する余地はあるでしょう。
公式動画で学びたい方はこちらより。
公庫が提供しているサービス
新事業活動促進資金
これは現在行っている事業の他の分野に進出して経営の多角化を考えている人が新事業開始時または開始5年以内に利用できる制度です。
こちらの制度は基準金利より0.4%低い金利が適用され、融資期間は最長で20年となります。例えば所有している物件にソーラーシステムを設置して太陽光発電事業を開始するというような場合に利用することができます。
不動産投資以外の事業を行っている人が新たに不動産投資を始める場合にも利用できます。ただし、この場合は土地取得費用については基準金利が適用されます。
女性、若者/シニア起業家資金
女性や30歳未満または55歳以上の男性が事業開始時か事業開始後7年以内に利用できる制度です。不動産投資にも活用することができます。
金利・借入期間は新規事業活動促進資金と同じです。
創業支援貸付利率特例制度
新たに事業を始める時か、事業を開始して1年以内であれば利用できる制度です。
この制度は新規事業活動促進資金や、女性、若者/シニア起業家資金と併用できることが特徴です。併用すれば最大で基準金利より0.6%低い金利での融資を受けられます。
なお、新規事業資金+女性、若者/シニア起業家資金の組み合わせでは併用できません。
普通貸付
上記の3つの制度を利用できない場合でも、普通貸付により融資を受けられます。
金利は基準金利が適用され融資期間は最長10年と上記の3制度に比べて不利ですが、物件購入費用やリフォーム費用にあてることができます。
環境・エネルギー対策資金
非化石エネルギー設備(ソーラー発電システム等、石油・石炭に頼らないもの)や省エネルギー効果の高い設備を導入する人や、環境対策促進事業を行う人が利用できます。
不動産投資のための公庫の利点
公庫といえども実際の融資では担保物権や融資を受ける人の属性も関係します。
ただし、不動産投資においては公庫は以下のようなメリットを持っています。
無担保枠がある
公庫では個人に対する無担保枠が2千万円用意されています。
そのため、購入物件の担保価値次第ではフルローンを受けることができるでしょう。但し、返済期間を15年以上とする場合は自己資金を入れるように求められます。
概ね自己資金は物件価格の10%程度を求められる場合が多くなっています。
木造物件や市街化調整区域に所在する物件でも融資可能
木造物件は民間金融機関が提供している一部のパッケージ型融資では融資対象外となっていますが、公庫の融資では木造物件購入にも融資を受けられます。
また、市街化調整区域に所在している物件は、基本的に再建築が難しい、利用方法が限定される等の理由で同じく民間金融機関の融資対象とはなっていない場合がほとんどですが、公庫では融資を受けられます。
ただし、これらの物件は基本的に担保評価が低いため、融資条件が厳しめに設定される傾向にあります。
また、違法建築物件などには公庫は一切融資をしていません。
金利が低い
民間金融機関のパッケージ型のローン金利はおおよそ4%前後ですが、公庫の金利はかなり低く設定されています。担保設定状況にもよりますが、1%台中盤~2%台前半程度であることが多いようです。
ただし、パッケージ型融資と比較すると融資期間は短い傾向にあるため、キャッシュフローがきちんとプラスになるかどうかは慎重に検討する必要があります。
纏め
・公庫の利用によって比較的有利な金利条件で融資を受けられることがある
・公庫の貸付条件に自分があっているかどうか検討することが必要
・公庫の各制度でも併用できるものとできないものがあるので注意
・公庫の融資はおしなべて金利は低いが借入期間が短い場合が多いので、キャッシュフローの吟味は慎重に
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