【不動産投資】レントロールとは?見方などをわかりやすく徹底解説!

物件の吟味をある程度していき、どの物件を買うか概ね最終候補が上がってきた段階でレントロール(賃貸借契約状況一覧表)を仲介業者から渡されます。

レントロールは現在の家賃収入だけではなく、将来の賃料収入の予測の役に立ったり、売却額を予想したり、果ては現在の購入価格が妥当かどうか検討したり、様々な場面で役に立つ資料なのですが、いくつか注意して見なければならないポイントがあります。

この記事ではまずレントロールの賃料についてお話しさせていただきます。

目次

レントロールとは?雛形はどのようなものがある?

レントロールは、物件を購入する時点で入居している既存入居者の入居条件の一覧表です。

例をあげると下の表のように、現在の賃貸条件が一覧表の形でまとめられています。

【レントロールの例 尚、平成30年5月1日時点】

部屋
番号
賃料条件(左:賃料 右:共益費)敷金面積
(㎡)
入居時点次回更新
現況新規
10160,0003,00060,0003,00060,00025.00H30.4.1H32.4.1
10280,0003,00060,0003,00080,00025.00H19.4.1H31.4.1
20170,0003,00061,0003,00070,00025.00H16.4.1H32.4.1
20261,0003,00061,0003,00061,00025.00H30.3.1H32.3.1
30165,0003,00061,0003,00065,00025.00H30.2.1H32.2.1
30261,0003,00061,0003,00061,00025.00H30.1.1H32.1.1
合計397,00018,000364,00018,000397,000150.00

上の例は非常に単純かつ小規模な建物を例にしましたが、レントロールは以上のように各部屋ごとの賃料・共益費、敷金等の一時金、専有面積、現在の契約の始期と終期が記載されているのが普通です。駐車場収入や自動販売機収入があれば別途それらも記載されます。

賃料の部分は「現況」と「新規」に分かれていますが、「現況」は今の入居者の賃貸条件を、「新規」は仮にその部屋が現在空室だとしていくらくらいで貸すことができるかという業者の見立ての賃料が記載されています。

尚、レントロールには決まった書式というものはありません。ですから、必ずしも上の表の通りの情報が記載されているとは限りません。ネット上には様々な雛形が存在するのでそれらを確認しておいても良いでしょう。

ですが、レントロールを十分に利用するために、「現況の賃料・共益費及び入居者の入居時点、一時金の金額、各部屋の専有面積」の情報は必ず記載してもらう必要があります。

新規賃料、継続賃料の違いって?

新規賃料とは?

上のレントロールで赤字で示した箇所を見てください。

他の部屋と面積は全く同じなので、102号室と201号室の現況賃料だけが他の部屋よりかなり高くなっています。その一方で、「新規」の欄は他の部屋とほぼ同じです。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

通常、賃料は建物新築時点がピークで、その後は徐々に下がっていきます。経年によって建物が劣化するからです。

102号室と201号室以外の「入居時点」を見てください。極端な例にしましたが、他の部屋は入居時点がほとんどレントロール作成時点である平成30年5月1日に近接しており、新しい時期に借りられたことになっています。つまり、他の部屋は「現在の市場動向を反映した新規の適切な賃料」となっているものと考えられます。

これを専門的には「新規賃料」と言います。仮に現在空室として、新たに入居者を募集するといくらで貸せるか、ということを表した賃料のことです。

尚、レントロールに書かれる「新規賃料」は業者の査定であることがほとんどなので、業者によって過度に楽観的な高い賃料を書く業者もあれば、過度に悲観的な低い賃料を書く業者もいます。

比較的新しい時期に新しく借りられた部屋の賃料を十分チェックしたり、必要と感じれば他の業者に賃料相場を聞く等して、新規賃料水準もレントロールを鵜呑みにしないようにする必要はあります。

今度は102号室と201号室の「入居時点」を見ると、かなり古い時期に借りられていることが分かります。

そのため、この2部屋に関しては他の部屋と比べて昔の高い賃料水準の名残が残っています。これを「継続賃料」と言います。昔はこの建物も新しかったので比較的高い賃料で貸すことができたのでしょう。しかし、建物の劣化等によって新規賃料との間に格差が生じています。

やや複雑な概念ですが、新規賃料はあくまでその時点でいくらで貸せるかということを表しますから、ダイナミックな変動をします。マンションではあまり大きな変動をしないかもしれませんが、例えば東京の銀座の1階店舗の賃料等は経済情勢が悪いと坪10万円程度だったのが、経済情勢が良くなると3年で坪30万円程度と3倍程度になる等、短期間に大きな変動を示す場合があります。

継続賃料とは?

しかし、継続賃料は異なります。継続賃料を言い換えると、「昔から契約している賃借人と賃貸人との間の交渉で決まる賃料」です。昔からの契約の間には、賃借人が一部賃貸人が負担するはずの建物修繕費を負担したり、その逆に賃貸人が賃借人の要望に応じて設備を更新したり、特殊な事情のある場合もあるはずです。

そうでなくても、この場合賃貸人と賃借人とはいわば「昔からお付き合いしているお得意様同士」ですから、新規賃料が例えば一気に3倍に下がったり上がったりしても、中々「来月から賃料を3倍にしてくれ、または1/3にしてくれ」とは言えません。

そのため、継続賃料は新規賃料に比べて緩やかにしか変動しないのです。
上のレントロールの例では、賃借人の方が特段賃料値下げ交渉をしないでずるずる契約を続けてきた結果、割高な賃料でも借りてくれているのだろうと推測できます。

将来賃料が下がる可能性を予測する

この物件を購入する投資家としては、「今現在他の部屋より高い賃料を取れているからいいじゃないか」という考え方ではいけません。いつ102号室と201号室の入居者が出ていってしまうか分からないためです。

だからこそ基本的には数年後この2部屋は新規賃料ベース程度のいわば「相場賃料」に落ち着くものだと考えて利回りを考える必要があります。

また、賃料収入が下落すると物件価格は当然下落します。収益物件はいわゆる収益還元法による収益価格ベース、仲介業者の査定基準ですと、

「満室想定賃料収入÷表面利回り」

で査定されているケースがほとんどでしょう。

仮に上のレントロールでこの式を「現況(=継続賃料)」と、「新規(=新規賃料)」のそれぞれの数字で当てはめてみましょう。現況ベースで行った場合、表面利回りを10%とすると、物件価格は

(賃料397,000円+共益費18,000円)×12ヶ月÷10%=49,800,000円

です。

一方、新規賃料ベースで行った場合は

(賃料364,000円+共益費18,000円)×12ヶ月÷10%=45,840,000円

となり、現況ベースとの差は3,960,000円のマイナスです。

この例は部屋数も少ない小規模物件で行ったものですが、物件規模が大きくなればなるほどこの格差は広がる傾向があります。

賃料が下がる可能性があることに関しては、建物維持管理や修繕等を採算の取れる範囲でしっかり行う等の賃料を下げないことを考えるだけでは足りず、仮に将来賃料が下がっても大丈夫なように収支計画を立てる必要があります。

賃料に関しては以上のような読み方を十分マスターしておきましょう。

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