不動産の取引は基本的に高額なやりとりが主ですから、契約書を作成し、さらに所有権が移転したということを表示するために登記をし…というように、それなりに煩雑な手続きが必要です。
また、契約書の作成にも、登記の移転にも税金がかかります。
そこでこの記事では不動産取得時にかかる税金(印紙税,取得税,登録免許税)について説明させていただき、三為業者についても解説していきます。
不動産取得時にかかる3つの税金
不動産取得時にかかる税金①『印紙税』
不動産の取引の際は、売買契約書を必ず作成します。印紙税は契約書の作成に課せられる税金です。
納税義務者は文書を作成した人です。不動産の売買契約書ですと、ほとんどの場合「印紙その他の費用は売主・買主が折半して負担する」等という形になっているかと思います。
納付方法は、契約書等作成した文書に印紙を貼り付け、その上から消印をすることで納付したとみなされます。
尚、契約書にはいわゆる本契約書だけではなく、売買予約契約書、仮契約書、停止条件付契約書(ある条件を満たしたとき契約書の効力が発生しますというもの)、念書や覚書、変更契約書といった種類がありますが、これらを作成した時、それぞれに印紙を貼らなければなりません。印紙税の額等の詳細解説は煩雑になるのでここでは記載を割愛しますが、契約書を多く作れば作るほどかかってしまうということです。
尚、契約金額の記載のない契約書については印紙税は非課税となっています。そのため、贈与契約書では印紙税はかかりません。また、遺産分割協議書も非課税となっています。
【印紙税のこぼれ話】印紙税になぜ課税されるの?
ここでこぼれ話のようなものですが、なぜ印紙税が課税されなければならないのかというお話をさせていただきます。(興味のない方は下にスクロールしていただいてOKです。)
商取引のあったときは、当事者にはそれ相応の税金を負担するだけの財力があるとみなされます。これに課税されるのが”流通税”です。
日本での印紙税の歴史は、明治6年の「受取諸証文印紙貼用心得方規則」というもので採用されて始まりました。当初は印紙の貼っていない証書は裁判上の証拠としないとまでされていましたから、印紙はかなり重要視されていたようです。
現在では不動産取得税や登録免許税、建物に課税される消費税等、不動産の取引について課税される税制がかなり細かく整備されていますから、印紙税はもうすでに存在価値がないという人もいます。
課税する側としては、「経済取引等に伴って作成される文書のうち、一般的にその出現した背後には相当の経済的利益が存在し、「軽度な」補完的課税の対象に取り上げてしかるべき文書に課せられる国税である」というように、苦しい説明をつけています。
税務署の窓口等での雑談で聞いた話で、「契約書を公的な面から担保するため」という話を筆者は個人的に聞いたことがあります。いずれにせよ、インターネット上の電子商取引では印紙を貼らなくても良いとされているので、今後印紙税がどうなるのかは興味深い所です。
不動産取得時にかかる税金②『不動産取得税』
不動産取得税はその不動産の金額にかかる都道府県税です。これについては金額も大きくなりやすいですから、別稿で解説します。尚、所有権移転登記をあえてしなかった場合でも、不動産取得税は課税されます。
不動産取得時にかかる税金③『登録免許税』
登録免許税は、所有権移転登記や新築時の所有権保存登記、住宅ローンに抵当権を付けた場合の抵当権設定登記をするときに課せられる税金です。
この税金は、登記の種類と登記をしようとする不動産の態様等に応じて課税されることになっています。
不動産の取引ごとに登録免許税は課税されますが、登記の種類と登録免許税の詳細についても別記事で解説します。
尚、登録免許税もそれなりの額になりますから、かつての判例では取引当事者に登録免許税の節税を認めるためという理由付けで、「中間省略登記」というものが認められていました。
中間省略登記とは、例えば不動産が①売主→不動産業者と売り渡されて、②不動産業者→買主というように最終的に売買された場合、余計な登録免許税を払わないために①の売主から不動産業者への所有権移転登記をせず、直接売主→買主と所有権移転登記を行うことを言います。
平成16年に不動産登記法が改正され、登記の申請に当たっては取引の経緯の実態を記載した「登記原因証明情報」を提出することとされ、この中間省略登記手続きはこれに記載されている所有権移転の実態を表していないので申請が受理されず、中間省略登記はできなくなりました。
ここで出てきたのが、いわゆる三為業者(さんため業者)です。
三為業者の問題点
中間省略登記がなぜダメになったかというと、不動産の所有権が売主→不動産業者→買主と移転しているのに、所有権の移転登記を売主→買主とすることは実際の動きと違っているからです。
それであれば不動産業者に所有権を移転させず、実際の所有権を売主から買主に直接移転させてしまえば(やや屁理屈とは感じますが)所有権移転の実態を反映しますから、売主→買主へ直接所有権移転登記をしても問題ないということになります。
この方法が、「第三者の為にする契約」という方式です。
「第三者のためにする契約」方式は、売主→業者間の売買契約の特約事項として、「業者は売買代金全額の支払いまでに本件不動産の所有権の移転先となる者(注・買主)を指名するものとし、売主は本件土地の所有権を業者の指定する者に対し業者の指定及び売買代金全額の支払いを条件として直接移転することとする」という条項を記載することです。
これを付けると、売買代金全額の支払いまでは不動産の所有権が業者に移転しませんから、買主が決まるまで売主への代金の支払いの一部を残しておけば所有権は業者に移転していないことになります。
不動産の転売をして、買主が決まるまでこのままにしておけばいいのです。そして、買主が決まったとき、つまり業者と買主の間での売買契約が締結されたときに不動産の所有権を売主から買主に直接移転させればいいのです。
法律上この方法には全く問題ないのですが、実体から見ると業者にだけ得な方式になっています。
何故かというと、通常不動産仲介業者が行う取引仲介(正確には媒介です)では、売主に買主を紹介することで仲介業者は仲介手数料を得ることになります。その仲介手数料はおおよそ売買金額の3%です。
しかし、この「第三者の為にする契約」では、売主→業者間の売買代金と、業者→買主間の売買代金の差額がまるまる業者の利益になります。
宅建業法で定められている仲介手数料を超える利益を得る脱法行為ではないかということですね。多くの場合、業者にしか利益がないという結果になります。
しかし、三為業者を使うメリットももちろんあります。
買主にとっては三為業者が一定期間瑕疵担保責任を持ってくれること、三為業者は売り上げを上げるために銀行ローンを通そうとしますから、ローンの審査等について知識がなくても業者がより頑張ってくれるというメリットがあります。
売主にとっては、現実には業者と売買契約をしているわけですから、瑕疵担保責任を免れるというメリットはあります。
このようなメリットを重視するのであれば、三為業者を利用することは問題ないとも言えます。
まとめ
やや話が横道にそれてしまいましたが、不動産取得の手続きにかかる印紙税・登録免許税についてはほとんど節税の方法がありません。比較的少額な手続税をごまかそうとするよりも、決められた税額をしっかり払った方が良いでしょう。
物件購入の最初から税額分も取得費用として織り込んでおくことをおすすめします。
不動産取得税についてはタイミングや特例の使い方によっては節税できる場合もありますので別稿で細かくお話しします。