建物と設備を分けて減価償却費を多くとる

毎期の減価償却費を算出する基本は建物価格÷耐用年数です。

しかし、建物と設備を分けて計上することで、理論上減価償却費を多くとることができ、より税務対策に役立ちますので、その方法を紹介します。

目次

減価償却の三要素

会計処理上、減価償却の三要素として、「取得価格」「残存価格」「耐用年数(=償却期間)」の3つが言われます。
取得価格と耐用年数が決まれば毎年の減価償却費が決まります。

残存価格は耐用年数到来時点で予想される売却額ですが、会計処理上現在はゼロとするルールになっています。つまり、毎期の減価償却費は「取得価格÷耐用年数」で求められるというわけです。

当然取得価格が大きくなればなるほど、不動産投資に当てはめれば土地は減価償却の対象にならないので建物価格が大きければ大きいほど減価償却費は多くなります。

ここでもうひとつ考えてください。

上の減価償却費を求める式では耐用年数が分母ですから、取得価格が仮に同じでも耐用年数が短ければ短いほど、減価償却費は大きくなる計算になります。

建物の耐用年数は原則法定で決められており、動かすことができません。しかし、建物の設備は基本的に「建物に附属した動産」ですから、不動産である建物本体と比較して法定耐用年数は短く設定されています。

つまり、建物の総額は変えられなくても、建物を本体と設備に分けて会計処理することで、より法定耐用年数が短い設備部分の減価償却費を多くとることができるわけです。

建物と設備を分けて計上することで償却期間が短縮できる

建物は本体である躯体部分と給湯機やエレベータ等の付帯設備に分けることができます。

ここで、付帯設備の法定耐用年数は新品の調達からでも15年と定められていますから、ほとんどの場合で建物本体よりも短い償却期間が設定されています。

更に、法定耐用年数を超えた部分は3年で償却ができますから、より減価償却費は多くなります。

この建物本体と付帯設備を分けて計上して減価償却を行う方法は、RCやSRCのように建物本体の耐用年数が長い物件を購入する場合は特に有効な方法となります。

シミュレーションの一例

具体例として築25年のRC造、建物の価格1億円の物件の減価償却費を考えてみます。

築25年の物件ですから、残りの減価償却期間は約25年です。
そのため、本体と付帯設備を分けない場合は1年あたりの減価償却費は単純に
1億円÷25年=4百万円となります。

本体と設備を分けた場合を考えてみましょう。
設備の割合は概ね建物全体の1~2割、エレベータがあるなどで最大3割程度と個別性がありますが、ここでは3割とします。

そうすると本体価格は1億円×(1-30%)=7千万円
付帯設備価格は1億円×30%=3千万円となります。

25年を経過していますから、残りの減価償却期間は本体が25年、設備が3年です。
以上から減価償却費は

本体 7千万円÷25年=2,800,000円
設備 3千万円÷3年=10,000,000円
合計 12,800,000円

と、本体と付帯設備を分けない場合よりも880万円も多く減価償却費を取れることになります。(ただし最初の3年間のみ。以降は280万円しか減価償却費が取れません)

以上のとおり建物本体と設備を分けて計上することで、減価償却費を短期間で多くとって、高い節税効果に役立てることもできます。

ただし上の例のとおり、設備の減価償却期間が終わってしまった後は建物本体と設備を分けない場合よりも減価償却費が少なくなってしまうケースがあることは注意してください。

Tips

尚、建物の設備価格は上記のように建物価格に占める設備割合を査定して、建物価格×設備割合の計算式で算出することが一般的です。

設備割合については建物の個別性もありますが大体のケースで1~2割、多くても3割程度しか通常のマンションの場合は認められないでしょう。

しかし、物件売買代金のうち、建物価格の割合を多くしたうえでこの方法を取れば相乗効果で減価償却費をより多くとることができます。

建物価格の割合の算出方法は別記事で紹介しているとおりいくつかの方法がありますが、それとの組み合わせでこの記事の内容を役立てていただければと思います。

纏め

  • 建物と設備を分けて取ることで物件取得当初数年間の減価償却費をより多くとることができる
  • 設備割合はマンションの場合1~2割程度が一般的。多くても3割程度までしか認められないケースが多い
  • 建物価格を多くとる方法と併用することで節税効果は高くなる
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