住宅取得資金について親からの借金とすることで贈与税がかからない場合があるということをお話ししました。
では、住宅ローンを親が代わりに払ったら贈与税になるのでしょうか。
実質面で見ると子供が払うべきお金を親が払っているのだから贈与になるとも見ることができます。そこでこの記事では、子供(息子)の住宅ローンを親が支払った場合の贈与税について、それぞれのケースごとに解説していきます。
子供(息子)の住宅ローンについて親が保証人になった場合
金融機関から子供が子供名義で住宅ローンを組んだけれど、子供の返済能力だけでは銀行が貸してくれる金額に限度がある場合です。
仮に、子供だけの返済能力(お金を返せる能力で、一般的には信用力とも言われますが)だけでは住宅取得資金に1,000万円足りないとします。
この場合に親が現金で1,000万円もっていたとします。これを子供にそのまま住宅取得資金として贈与するのではなく、親が銀行と交渉して「この1,000万円を定期預金としてそのまま預け入れるから、銀行から子供に貸す住宅ローンの額を増やしてやって欲しい」と言うこともあります。
この場合、仮に定期預金金利が0.3%、住宅ローン金利が3.0%とすると、単純計算銀行の金利は2.7%の儲けが出ますから、こういう話はないではありません。
親から子供にこの1,000万円をそのまま贈与し、贈与税と比較してこっちの方が得だと思えばこのような行動はあり得るでしょう。
そして、この場合贈与税の問題は起こりません。あくまで子供名義の住宅ローンだからです。
なお、この場合銀行は当然親に子供の住宅ローンの連帯保証人になることを要求するでしょう。連帯保証人は主たる債務者(子供)が返済しない場合、その金額を返済する義務を負いますが、その場合が次のケースです。
子供が返済すべき住宅ローンの一部を親が返済した場合
上のケースのように親が定期預金を入れたり連帯保証人にならなかったりすれば銀行が住宅ローンを満額出してくれないというのは、子供の返済能力が低いということに原因があります
いくら親がテコ入れをして無理な金額の住宅ローンを通したとしても、その返済金の一部をどうしても払えないということもあるでしょう。
そして、払えない分は親がその払えない分について代わりに払う(これを法律上は代位弁済と言います)ことが多いかと思います。この場合、贈与税の対象となります。
具体的には返済金のうち、親が代わりに支払った部分についてその年に贈与が合ったものとして原則通りの贈与税の計算がされることになります。
ただし、贈与税の計算には基礎控除として110万円がありますから、親が払った金額が110万円を超えた部分について、「子供に」贈与税が課税されることになります。
住宅ローンが通った後の税務調査後、親が代わりに一括返済した場合
不動産投資向けのローンは、基本的には返済期間を長く設定するのが投資手法から見て原則ですが、マイホームを購入するための住宅ローンに関しては早く返済を終わらせてしまうに越したことはありません。
最初の例で、親が定期預金を入れて子供名義の住宅ローン審査が通り、税務署の調査も無事に終わったとしましょう。
この場合、定期預金の金利と住宅ローン金利の差額は家計の負担になってきますから、これを払い続けるのは親から見てかなりの損失です。
そこで、定期預金を取り崩して住宅ローンの借入金を一括返済してしまいたくなるのが親の心理です。銀行と交渉すれば住宅ローンの繰り上げ返済扱いで一括返済をしてしまうことは当然可能です。
しかし、税務署の方でも何年かしてからもう一度税務調査をすることがあり得ます。
特にこのような住宅ローンを組む際、親がテコ入れをしないと借りることができなかった場合は税務署も最初に何となく怪しいなと思っていることがほとんどです。
後年の再調査で親が子供に代わって一括で住宅ローンを返済していたことが分かると、その一括返済は贈与に該当すると判断されることは当然あり得ます。
尚、贈与税には6年経つと更正されない(再度の調査をされないとほぼ同じです)という決まりがありますが、この場合の贈与の時期はローンを一括返済した時です。
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そのため、一括返済の翌年の3月15日から6年を過ぎていないと贈与と判断されて贈与税を課税されます。
子供(息子)の住宅ローンを親が支払うと贈与税になる!?保証人になった場合は?まとめ
子供の住宅ローンについて親が払った場合、経済実態からみたら当然と言えば当然なのですが、その払った分は贈与になるということをお話ししました。
これまで、住宅取得時の親からの資金援助について原則の話、住宅取得時の非課税枠の時限立法の話、親から金銭を借りたとして贈与としないで申告する方法、子供の住宅ローンを親が代わりに払ったらどうなるのかの話をしてきました。
おおむね当然ですが、特になるのはそもそも贈与税が課税されない非課税枠の制度、親からの借金とする方法の順番です。
この順に検討していって、それでもだめならダメな部分について次善の方法を考えるというように検討していけば、住宅取得時の親からの贈与に関しては不当に高い税金を課せられることはないかと思います。