なぜブランドショップは高い家賃を出して一等地に出店するのか

家電量販店が賃料減額交渉をする理由 の記事でお話ししたとおり、テナントの賃料支払いの元となるのは、売上高です。

つまり賃料の高い地域に出店すればするほど、たくさん売らなければ賃料が払えず、テナントは損をしてしまうはずです。

一般的に賃料の高い地域はそれだけお客さんが入る地域でもありますが、東京都の銀座エリアの中央通り沿いや、表参道沿い等では、1階店舗賃料の相場が15万円/坪~30万円/坪となるような場合もみられています(平成29年8月現在)。

そのような地域に、なぜブランドショップが出店するのでしょうか。

目次

銀座や表参道のブランドショップの状況

下の写真は、ある休日の表参道ヒルズ前の写真です。

表参道ヒルズにはディオール等のブランドショップが入居していますし、表参道沿いにはルイ・ヴィトンやタグホイヤー等の高級ブランドショップが数多く出店しています。

しかし、店舗の内部にはいつのぞいてもあまりお客さんが入っていません。

1アイテムが安くても数万円、高ければ数十万円~数百万円するような高額商品を扱っているブランドショップの傾向はおしなべてそうです。

その一方で、商品の値段が数百円~数千円程度のコスメ店舗やBEN&JERRY’S等のアイスクリーム店は満員でした。

商品の値段が少なくとも1万円を超えるような店舗で表参道沿いにあるもののうち、大体いつみてもお客さんがかなり入っているのはアップルストアくらいではないでしょうか。

表参道でも銀座でも、単価が安い裏通りのお店の方がお客さんが行列を作っているというような状況が良く見られます。

ブランドショップごとの売上高までは分かりませんが、この客入りで高い賃料が払えるのかな?と余計な心配をしてしまうこともあります。

そこで、ブランドショップに関わりのある人に、「採算が取れますか?」と聞いてみました。

すると、以下のような回答が返ってきました。

ブランドショップは、お客さんで混雑していない方が良い

ブランドショップはお客さんで混雑していない方が良い理由は主に3つです。

1つ当たりの商品の金額が高いから、多く売れなくても構わない

1つ当り数十万円~数百万円の商品を扱っているわけですから、そんなにお客さんでごった返すほど来客数がなくても良いそうです。

これはストンと納得できました。

あまりお客さんが多く来て混雑しても、売上高が逆に低くなってしまう

ブランドショップの主なお客さんは富裕層です。

そのような人たちが来店した時に、商品を見に来ているだけのお客さんで混雑していてあわただしい雰囲気だと、本当に買ってくれるお客さんが離れて行ってしまうということです。

主なお客さんは、店員さんとゆっくり話して、場合によってはお茶まで飲んでのんびりと商品を選ぶことを好むそうで、このようなお客さんがリピーターになるそうです。

本当の富裕層はそもそも来店しない場合も多い

ブランドショップに来て商品を見て選ぶのではなく、お店に自宅まで商品を持ってこさせて、その上で「今回はこれにします」というようなお客さんもいらっしゃるようです。

世の中にはお金持ちもいるものだと思いましたが、本当にこのようにして購入する方もいるそうです。しかも、場合によっては1つ1千万円単位するような高級ジュエリー等をこのように買う方もいる、とのことでした…。

ブランドショップが家賃の高い一等地に出店する理由

そのように、ブランドショップはお客さんで混雑していなくても商売が成り立つのであれば、わざわざ高い家賃を払って一等地に出店する必要はないはずです。

これについても聞いてみましたが、答えはシンプルでした。

銀座の中央通り沿いや、表参道沿い等の価格水準が高く、かつオシャレ・高級というイメージのある地域に旗艦店を持っていること自体がブランドイメージを高めてお客さんを呼ぶから

つまり、「うちのブランドは表参道の路面店に出店していますよ(=暗にオシャレで高級ですよ)」というイメージを強化するために出店するのだそうです。

これによって、ブランド全体のイメージアップにつながって、他の地域にある店舗や、ネット通販等においても売上にプラスの効果が得られるためだそうです。

 まとめ

  • 銀座や表参道等のブランドショップは、意外と実店舗にお客さんが入っていない場合が多い
  • ブランドショップは混雑していない方が良い面もある
  • ブランドショップが一等地に出店するのは、ブランドイメージを高めるため

今回は一般的な投資家からみた、テナントの観点からみるとちょっと原則から外れた出店動機の紹介として、このような事例を紹介してみました。

何かの参考になれば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次