物件購入の際は、ほとんどのケースで管理会社の管理契約も新しいオーナーが引き継ぎます。
しかし、前の管理会社の管理体制に納得いかない場合や、入居者からのクレームがあまりにも多いような場合は管理会社を変更することも検討しなければなりません。かといって管理会社を変更する際には入居者に不安を与えかねませんので注意して行う必要も。
そこで今回こちらの記事ではマンションや賃貸のオーナーさんが管理会社を変える時に気をつけるべき点などをまとめました。
良い管理会社ばかりではないというのが現状
管理会社の基本的な業務範囲は、入居者募集・家賃集金・物件の定期清掃や日常メンテナンス・入居者トラブルへの対処・オーナーへの報告業務です。そしてオーナーは受け取った賃料の内からフィーを管理会社に支払うという契約が基本です。
現代の不動産投資においては、管理会社なしで物件を運営できる人、いわゆる直接賃貸・運営をしておられるオーナーは少数派で、ほとんどの方が管理会社を利用しています。
業務を滞りも過不足もなく遂行してくれる優良な業者も多いのですが、悪質な業者もいます。
金銭的な利益だけを考えるのであれば、管理会社は毎月何もしなくてもオーナーと契約した一定のフィーは受け取ることができますから、悪質な管理会社にとって最も良い状態は、「定期清掃程度の仕事しかせず(これも大体は下請け業者に丸投げですから、実質何もしていないのと同じです)、毎月管理フィーを受け取れる状態」が最良の状態なのです。
その一方で、オーナーはせっかく入ってくれた入居者にはできるだけ長い間部屋を借りてほしいでしょうし、入居者は快適な住環境や適切なメンテナンス、エアコンなど設備が壊れた場合は迅速な対応をしてほしいと思っています。
こういった面で、管理会社とオーナー・入居者の利益は相反する面があります。
そして、残念ながらそういう管理をしていると言わざるを得ない管理会社や担当者は一定数います。
そのため、オーナーとしては管理会社に丸投げをせず、定期報告やトラブル対応時の連絡等をしっかりチェックして、ある程度は現場の管理内容を把握しておく必要があります。
管理会社変更の際の注意点
前のオーナーが使っていた、または現在契約している管理会社があまりにもずさんな場合は管理会社を変更する必要があります。
管理会社変更の際は、前の管理会社に2~3か月前に解約の申し入れをし、その契約が終了する翌日から新しい管理会社と管理委託契約を結びます。
その解約の申入れをしている2~3ヶ月の間に新旧管理会社間で引継ぎをしっかり行ってもらうようにするわけです。
要点は「管理の空白期間を作らない」「引継ぎをしっかりやってもらっているかチェックする」「入居者への対応」の3点です。特に「入居者への対応」はしっかりと対応しておきたいポイントです。
入居者への対応
入居者対応はしっかりやってもらうようにしましょう。管理会社が変更されると、保証会社が変わったり家賃の振込先が変わったりして、入居者にも少なからず影響が出ます。
特に家賃の振込先の変更は入居者に不安を与えます。数年前、「家賃の振込先が変わりました」としてマンションのポストに封書を入れて入居者から家賃をだまし取る、いわば家賃版の振り込め詐欺が起こったことがありましたから、そのような不安を与えないように丁寧な通知が必要です。
具体的には、新旧管理会社とオーナーの連名で管理会社が変更になること、家賃はいつの分からはどこに振り込んで欲しいかということ、保証会社の自動引き落としサービスを利用しているのであればその解約等も必要ですが、そういったことを丁寧に入居者あてに文書及び電話で説明するようにします。
この時、各住戸に配布する文書には「201号室 ○○様」というように入居者の名前を入れておくと丁寧です。
なぜなら家賃振り込め詐欺の場合、オートロック前の張り紙等を見れば古い管理会社名はわかりますし、建物登記簿謄本を取ればオーナーの名前はわかります。
しかし、入居者の名前はメールボックスに表札を出しているような場合を除きわかりません。ですから、入居者の名前をちゃんと入れておくことで詐欺ではないという安心感を与えておくわけです。
そのうえで電話等で経緯を説明すればより丁寧ですし、変更もスムーズでしょう。
実例・前の管理会社が倒産した場合
筆者が入居者の立場で経験した実例を紹介します。
管理会社が変更になったのですが、上のような新旧管理会社間の引継ぎがあって丁寧な変更ではなく、前の管理会社が倒産して1ヶ月分の家賃を持ち逃げしたというイレギュラーケースでした。
当然管理会社・家賃振込先変更の封書が入っていたのですが、この中に旧管理会社のサインはもらえなかったケースです。
封書には以下のものが入っていました。
- オーナーの説明書き
前の管理会社が倒産・夜逃げした等のことは書いておらず、ただ単に「前の管理会社との契約は解約しましたので今後は家賃を以下の口座にお支払いください。翌月分は今月末までにお願いします」の文書でした。 - オーナーと新しい管理会社との管理委託契約書の写し
封書が入っていた3ヶ月前の日付の契約でした。 - オーナーの印鑑登録証明
- 建物登記簿謄本
そして、家賃振り込みは毎月末日まででしたが、封書が入っていたのは当月の25日でした。
筆者はこれを見た瞬間詐欺を疑ってすぐに以前の管理会社に電話をかけました。
電話に出なかったので管理会社の現地にも行き、ようやくそこで夜逃げを確認して新しい管理会社に連絡を入れ、説明を求めました。
管理会社は以下の一点張りでした。
「詳細は説明できませんが、前の管理会社を刑事告訴する準備を進めています。入居者様は今月末までに私どもに家賃を振り込んでいただかないと滞納になります」
筆者は詐欺師ではない説明をすること、最初の家賃は振り込みではなく新しい管理会社の事務所に出向いて現金で払うので、自筆及び会社印入りの領収書を用意して待っていることを告げ、新しい管理会社に出向いて事実確認の上家賃を払いました。
筆者が出向くまで、家賃をおとなしく払った入居者は皆無だったようです。
この際のオーナーと新管理会社の対応でまずかった点は以下のとおりです。
- 上記の書類は偽造しようと思えば偽造できることを見落としている
- 詳細は伏せますがオーナーの説明書きが稚拙で何があったか入居者にはわからない
- そもそも新しい管理会社と契約を結んだのが3か月前ならば、家賃振り込み期限のギリギリまで連絡してこないのはあからさまにずさん
- 「刑事告訴」「家賃滞納」といった強めの言葉をいきなり使い、期限の余裕を与えないのは詐欺師の常套手段であることを理解していない
おそらくはこのオーナーは前の管理会社に丸投げで、賃貸借契約書のコピーすらももらっていなかったのではないかと思われます。新管理会社は入居者の名前も把握していないようでしたので。
法律的にはオーナーや新管理会社の対応は間違っているわけではありません。
しかし、入居者にとってはかなり不安な管理会社の変更です。
実際、単身者向け物件で身軽な入居者が多かったですから、この事件があってからすぐにどんどん入居者が出て行ってしまい、約20室中14室が空室になったという結果になりました。
オーナーさんや新管理会社も前の管理会社を追及する必要もあって大変でしょうが、入居者に不安を与えないように丁寧に事を進めなければなりません。
この場合はオーナーさんと新管理会社の担当者がそれぞれの住戸を回り、事情を説明してご理解いただいたうえで文書を手渡しする等の方法が最善であったと思われます。
不動産投資はただ転売を繰り返すものではありませんので、管理の重要さがこういった面からもお判りいただけたかと思われます。
まとめ
- 管理会社の中にはフィーだけもらって仕事はしたくない悪徳業者もいる
- 管理会社があまりにもひどい場合は変更することも検討する
- 管理会社変更の際は入居者に丁寧に説明し、不安感を与えないように
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