不動産の耐震性の手軽な確認方法

不動産を投資対象として考える場合、万が一大地震に見舞われたときに建物が耐えられるのか、損壊等の被害を受ける可能性があるならそれはどの程度かという地震リスクを抜きにして考えることはできません。

阪神淡路大震災の際、完全に倒壊した建物の多くが旧耐震基準の建物であり、耐震性に関するリスク、つまり地震リスクを不動産投資に織り込んで考えるべきであるとする考え方が一般的になっています。

今回は建物の耐震性を確認する方法について、ご説明していきます。

目次

耐震性をみるPML値とは?

J-REIT等ではPML値の概念を用い、投資適格性を有する物件か否かを判断しています。

PML値とは、予測最大損失率のことです。

その地域で50年に10%の確率(計算すると確率上475年に1回)で発生する大地震を想定した場合の被害の程度を評価し、その被害を補修し被災前の状態に復旧するための復旧工事費(=損失額)を、建物全体を新築する場合の額(再調達価格)で見積もって算出します。

計算式は以下の通りです。

PML値=(復旧工事費)÷(再調達価格)×100

一般的には10%以下なら軽微な被害で耐震性に問題なし、20%を超えると中破の可能性があり耐震性に問題があるとされています。

一般の人はPML値の確認までは不要

しかし、建築士やゼネコン等の専門機関に依頼して詳細な耐震診断を行うためには膨大な費用がかかることになりますが、PML値の算出までとなると、建築の専門家でなければ不可能です。

専門機関に耐震診断を依頼して、耐震診断報告書を入手すると数十万円、高い場合では数百万円のコストがかかるため、個人投資家等が購入可能な規模の物件の売主がわざわざ高いコストを払って詳細な耐震診断を行ってくれる場合は少ないです。

詳細な耐震診断とはいかないまでも、その建物がどの程度の耐震性能を有しているか、少ないコストで大まかに把握することをおすすめします。

建築基準法上の耐震基準に着目する

そこで、建築基準法上の耐震基準の変遷に注目することにします。

昭和56年6月1日に、建築基準法施行令が改正され、新耐震基準が導入されました。

一般的にこの日以降に「建築確認を受けた(竣工した、ではない)」建築物は「新耐震基準の建築物」とされています。

その後、平成12年6月1日に建築基準法及び施行令が再度改正され、新たな構造計算法が認められて、現在に至っています。

新耐震基準だからといって完全に安心できるわけではないですし、旧耐震基準の時代に建てられた建物でも詳細な耐震診断を行った結果、現行法規に照らしても耐震性に問題がないとされる場合もありますが、一般的には新耐震基準の建物であれば一応ある程度の規模の地震にも耐えることができると言われています。

耐震基準の情報を入手する

新耐震基準か、旧耐震基準かを調べるためには、「建築確認を受けた日」を基準とします。

建築確認を受けた日は、その建物が所在する市区町村(場合によっては都庁や県庁)の建築担当部署で「建築計画概要書」または「台帳記載事項証明書」を入手すれば良いだけです。

いずれの書類にもいつ建築確認を受けたかということが記載されています。この建築確認を受けた日が昭和56年6月1日以降であれば新耐震基準、それ以前であれば旧耐震基準の建物ということになるのです。

念のため、検査済証の発行を受けているかいないかも確認すれば、建築確認どおりに建物が建てられていることは公的に証明されていると言えることになります。

検査済証の発行を受けていれば、建築計画概要書にも台帳記載事項証明書にも発行日と発行番号が記載されるので、そこまで確認すれば十分です。

詳細な耐震診断ほどではないですが、一応これでその建物のある程度の耐震性能を調べることはできます。かかるコストは市区町村にもよりますが、概ねコピー代程度から数百円程度だけです。

住宅地図と建物の登記簿を持って役所の窓口へ行き、建築計画概要書・台帳記載事項証明書の確認をしたいと質問すれば、担当課を教えてもらえるので、その窓口でほぼその日のうちに取得することができます。

あまり手間もかからない簡単な方法と言えるでしょう。

尚、その建物が「特定建築物」で、改めて建築確認の取得が必要な規模の増築(改築や大規模修繕、大規模の模様替)を行う場合、現行の建築基準法に建物全体を適合させることが必要になります。

そのため、昭和56年6月1日以前に建築確認を受けて新築された建物であっても、増築等が最近されているのであれば、耐震改修はされているものと推定できます。

この場合も増築時の建築計画概要書や台帳記載事項証明書を取得して調査した上で、売主や仲介会社に確認をする方法が確実といえるでしょう。

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