不動産オーナーが不動産鑑定士を活用するのはこんなとき

不動産オーナーと一言に言っても、その種類はたくさんあります。

わかりやすいところでは、収益物件を購入して賃貸運営しておられる不動産投資家の方、先祖代々の広大な土地を所有しておられる、いわゆる地主の方等です。

ここでは、個人の不動産オーナーの方を念頭に置いて、不動産鑑定士がお役に立てると考えられる場面をご紹介します。

目次

不動産鑑定士とは?

不動産鑑定士とは、一言でまとめると「不動産の価格や賃料を算出する専門家」です。

一応国家資格ですがかなりマイナーな資格ですし、日本全国でも資格ホルダー数は約6千人、そのうち不動産鑑定士として業務を行っているのは約4千人程度と言われていますから、一般の方はご存知ない方が多いですし、不動産オーナーであっても「不動産鑑定士という言葉は聞いたことはあるけれど、何をやっているかは知らない」という方も多いのが現状です。

そもそも、不動産業者も査定価格として不動産の価格を日々算出していますし、税理士であっても相続の際の税務申告において不動産の価格の査定を行っていますから、価格の「査定」は必ずしも不動産鑑定士の独占業務ではありません。

不動産鑑定士の独占業務とは、「不動産の価値を、公的に通用する形で鑑定評価、もしくは査定する」ことです。

わかりやすい例を挙げると、「裁判上の証拠資料としての不動産価格を算出する」、「不動産取引価格の公開義務を負っている不動産投資法人が物件売買の際に不動産鑑定評価書を添付する」等です。

また、不動産業者の価格査定では収益物件であれば収益還元法だけ、それも「総収益÷表面利回り」という簡便法でしか求めない場合がほとんどです。税理士の税務申告の際も、土地については「相続税路線価×各種補正率×土地の面積」という査定方法です。

不動産鑑定士は、専門的に言うと価格の三面性というのですが、

  • その不動産を今改めて建築するとしたらいくらかかり、経年でどの程度減価しているか(原価性)
  • その不動産は市場でどの程度の価格で取引されているのか(市場性)
  • その不動産から生み出される収益はどのくらいか(収益性)

の3つを考えた上で、妥当と判断される不動産価格を鑑定評価することができます。

また、不動産鑑定評価においては基本的にはその不動産が最も有効に利用されている状態(最有効使用と言います)を前提とした価格を算出します。

以上から、不動産鑑定士は不動産業者や税理士よりも精緻な方法で、公的な証拠資料として利用できる価格を算出する専門家であると思っていただければ良いでしょう。

不動産オーナーが不動産鑑定士を活用する場面

個人の方が不動産鑑定士を利用する場面は実はあまり多くはありません。

売買であれば民法上「契約自由の原則」がありますから、例えば不動産鑑定士が「1億円が適正な鑑定評価額です」と鑑定評価書を書いても、売主・買主の合意があれば2億円で取引しても、5千万円で取引しても基本はOKです。

また、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するとそれなりの費用がかかりますから、個人オーナーが物件を売買する際に不動産鑑定士が必要となる場面はあまり多くないでしょう。

不動産オーナーが不動産鑑定士を活用する場面は、「客観的かつ公的に不動産の価格を知る必要があるとき」です。

具体的には以下のような場面が中心になります。

相続税の申告の場合

相続税の申告の場合、基本的には税理士が税務評価にのっとって物件価格を査定し、税務署に申告します。
しかし、規模が大きい土地の場合はこれでは適正な価格は算出できません。

何故なら、税理士が行う価格査定は、基本的には「相続税路線価×土地の面積」であるからです。

相続税路線価は100㎡~200㎡程度のその地域で標準的と考えられる規模の土地を前提に設定されています。住宅地で言うと買主がエンドユーザーと考えられる戸建住宅の土地の規模を前提に設定されています。

しかし、例えば2,000㎡等、大きい土地についてはその土地は個人の住宅用地としては購入されないでしょう。通常はその土地を区画割して販売する宅地分譲業者や建売業者が買主となるはずです。

区画販売のための用地として土地が変われるのであれば、地形や道路付けにもよりますが、通常は新しく道路を作る必要がありますし、場合によっては公園を作らなければいけないこともあります。

このような土地は税理士の行う価格査定ではなく、税理士と不動産鑑定士がタイアップして不動産鑑定士による鑑定評価額を基に税務申告をすることで相続税の減額を行うことができます。

相続の際の財産分与資料として

不動産オーナーの方が直接関係するようなことは少ないかもしれませんが、相続人となるお子さんや配偶者の方がおられる場合、どのように財産分与をするかの手当てをしておく必要があります。

詳細には別記事で記載しますが、不動産は「すぐには換金ができない、一般の人には客観的な価値が分かりにくい、分けられない」ものです。

そのため、資産を拡大して不動産をたくさん所有することには成功したけれど、相続の際の財産分与で子供同士が何十年ももめて骨肉の争いになるというケースはざらにあります。

そのような場合にも、弁護士と不動産鑑定士のタイアップになりますが、客観的な価値を不動産鑑定評価額と判定してもらうことで争いの火種を未然に防ぐことができる可能性があります。

減価償却のコントロール方法として

不動産投資家の方が最も関係するのはこの場面でしょう。不動産のうち、減価償却の対象になるのは建物のみですが、減価償却費をコントロールすることで毎期の収益を圧縮する等の会計処理ができるようになります。

当然、減価償却費が大きくなれば毎期の純利益は少なくなるわけですから、節税のための一つの方法になります。

不動産鑑定士は土地・建物の内訳価格を表示することもできますから、税務申告の際に、不動産鑑定評価書を添付することで建物価格の割合が大きくなれば、毎期の節税にも役立ちます。

これについても別記事で解説します。

まとめ

  • 不動産鑑定士は「公的資料として使える価格を算出する」専門家
  • 不動産鑑定士の活用によって、相続税の節税や減価償却のコントロールの他、相続の際の財産分与における親族間の争いを防ぐこともできる
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