自殺者は年々増えていると言われていますが、自殺する場所で多いのは自殺の名所と言われる場所ではなく、自宅です。
保有物件内で自殺が起こってしまえば、それは告知事項として次の入居者には告知しなければならなくなりますから、入居者募集等の面でオーナーの損害になってしまいます。
この記事では自殺が起こってしまった場合の対処法について解説します。
自殺が起こってしまったら
自殺に関しても、殺人事件と同様のリスクが付きまといます。
原状回復の必要は当然に発生しますから、当分の間その部屋は貸せなくなりますし、原状回復費用、場合によっては多額の総リフォーム費用がかかります。
前段で書いた通り、次の入居者にはその部屋で自殺があったことを告知しなければいけなくなりますから、当然次の入居者はつきづらくなりますし、場合によっては家賃を下げなければいけなくなることもあります。
自殺の場合、殺人と違って大々的に全国ネットで報道されるリスクは低いですが、それでも現場には警察が検証にやってきたりして一定期間ゴタゴタしますから、現在の入居者には自殺があったことは分かってしまうことがほとんどです。
また、最近知名度を上げてきている大島てる氏の事故物件検索サイトには、殺人の場合と同様に自殺であっても情報がキャッチされている限り容赦なくプロットされます。
尚、このサイトでは火災や事故死でもプロットされるケースがありますから、いわゆる「心理的瑕疵」についてはほとんどわかってしまうと言っても良いでしょう。(ユーザー投稿によるものもありますから、情報の信憑性が低いものもありますが…)
いずれにせよ、殺人事件の場合よりはリスクは低いですが、自殺の場合もオーナーにとって大きな損害になることは間違いありません。
遺族に損害賠償を請求することも「法的」には可能だが…
自殺した入居者との間の契約書に連帯保証人が付いていたり、入居者に相続人がいたりすれば、「法的」にはそれらの人に対して損害賠償を請求することもできます。
オーナーの心情的には難しい側面があると思いますが、一応法律では請求できることになっています。
判例では家賃5万円少々のワンルームマンションで起こった自殺に関して、入居者の親と連帯保証人に100万円強の支払いが認められたケースもあります。
尚、この裁判ではオーナーは700万円弱という月額家賃の約140ヶ月分、実に12年分相当額の請求をしていました。一部ではこのことによって、子供を自殺で無くして悲しんでいる親にこれほど法外な請求をするなんて、オーナーは血も涙もない人だということも言われていたようですが、これにはからくりがあります。
自殺によってオーナーが受けた損害に対する損害賠償を請求する裁判は、あくまで民事裁判です。
民事裁判では、裁判官は原告(オーナー)と被告(入居者の親と連帯保証人)の主張する範囲でしか判決を下すことはできません。
つまり、最初の裁判を起こすときに原告が100万円と主張すれば判決も100万円が上限になります。
しかし、オーナーの立場で見てみると、予期せぬ自殺によって物件自体の価値が下がり、更にリフォームや原状回復費用もいくらかかるか分からない、損害はいくらになるか予測もできないといった面があります。
そのため、裁判を起こす際にはかなり多額の主張をしておかなければ判決で得られる損害賠償の額に全く意味がなくなってしまうという、民事裁判上の側面があります。
とは言え、法律的な知識のない一般の人ではこういった舞台裏を読むことはできませんし、このような事件が万一報道されるケースでは報道機関も傾向としてセンセーショナルに書きます。
オーナーとしては踏んだり蹴ったりの状態になりかねません。
そのため、殺人事件の保険と同じように、自殺までカバーした保険に入っておくに越したことはないでしょう。
所有物件で自殺が起きた場合損害賠償が可能?入居者募集はどう対処する?まとめ
- 自殺の場合、殺人よりは程度は低い場合がほとんどだがオーナーにとっては大きな損害
- 遺族や保証人に損害賠償を請求することもできるが、心情や名誉感情からしないオーナーも多い
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