不動産鑑定士の起用により減価償却費をコントロールするという裏ワザ

不動産投資家の方が頭を悩ませる問題は、何と言っても税金対策でしょう。

利益を出しても、妥当な範囲を超えて税金を納めることになれば、最終的な手残りである税引後の純利益は少なくなってしまいます。

ここでは、物件保有期間中の節税に役立つ、不動産鑑定士の起用により減価償却費を多く取る方法をご紹介します。

目次

そもそも減価償却とは?

減価償却とは、固定資産(設備・機材など、通常一年を超えて利用されるものである。不動産投資ではもちろん不動産のことだ)を購入した際に、その価格を資産として計上し、その資産が価値を有している期間に購入費用を配分するという会計処理です。

不動産においては、土地は基本的に減価しないため対象とならず、建物だけが減価償却対象となります。

減価償却の要素として、「期間」と「耐用年数」が大きな要素となります。執筆時点現在(平成30年2月)、減価償却の方法としては定額法のみが認められています。

定額法は、「資産額÷通算耐用年数=1年間の減価償却費」とする算定方法です。

減価償却の期間を5年、購入時資産額を1千万円として減価償却のイメージをご紹介すると、以下のとおりです。

【減価償却イメージ 単位:万円】

 購入時1年目2年目3年目4年目5年目
資産額1,0008006004002000
減価
償却費
2002002002002000
減価償却
累計額
02004006008001,000

この場合、固定資産(=不動産)の価値が1千万円、減価償却期間が5年なので、1年当たりの減価償却費は1千万円÷5年間=2百万円となります。

減価償却費の額の合計を減価償却累計額というが、減価償却期間の最終年度である5年目で資産額が0円となり、減価償却累計額が1,000万円、当初の資産額と同額となっていることに着目してください。

減価償却はこのように取得価格を各期に均等に配分していく手続きです。

ここで着目していただきたいのは、減価償却はあくまで会計処理上このように購入費を配分する処理であって、減価償却費は実際にお金が出ていかない費用であるということです。

つまり、上記の毎期の減価償却費は会計上費用として計上できますので、その分毎期の純利益を圧縮して保有期間中に支払う税額を少なくすることができます。

ただし、実際にお金が出ていくことのない、概念上の費用ですから、減価償却費累計額は手元に現金として残ることになります。これを利用して再投資することも理論的には可能です。

不動産鑑定士の評価により建物価格割合を多くする

前段の表をもう一度ご覧ください。保有期間中の節税のためには、「毎期の減価償却費をできるだけ多く取る」ことを考える必要があります。

ここで、定額法による毎期の減価償却費の計算方法は、「資産額÷通算耐用年数=毎期の減価償却費」ですから、毎期の減価償却費を多く取るためには資産額を大きくするか、耐用年数を短くすれば良いわけです。

しかし、建物の耐用年数については国によって決められていますから、動かすことはできません。

建物の耐用年数については国税庁のホームページをご参照ください。

ある程度任意に動かすことができるのは、「資産額」、つまり「建物価格」です。減価償却対象となる建物価格を決めるのは、売買価格を土地と建物でどの程度の割合で配分するのかという問題です。

この配分方法には、

  1. 土地と建物の固定資産税評価額割合で按分する方法
  2. 土地の相続税路線価と面積から土地価格を算出して売買総額から控除し、残額を建物価格とする方法
  3. 建物の再調達価格と経過年数から建物の価格を算出して売買総額から控除し、残額を土地価格とする方法

等があります。

これらの方法は簡便な方法ですが、基本的に機械的な算出しかできません。
これらの方法で十分減価償却費が取れれば良いのですが、もう一つ、不動産鑑定士による評価を依頼する方法もあります。

不動産鑑定士による評価で何がメリットかと言えば、「収益物件について、建物の管理の状態や賃貸運営の良否も反映して建物価格を算出できる」ことです。

不動産鑑定士が価格を算出する際は、原価法、取引事例比較法、収益還元法の3手法を適用した上で最終的な評価額を決定します。

上で紹介した土地建物価格の配分方法のうち、③については基本的な考え方は不動産鑑定評価における原価法と同様ですが、この方法は「賃貸運営の良否を反映しにくい」という面を有しています。

これを反映できる方法は収益還元法ですが、これは不動産鑑定士による評価以外ではほとんど適用されていません。

簡単に言うと、管理状態も良く、入居者も良質でトラブルがなく、また建物の修繕や保守をしっかりやっている物件であれば比較的高い賃料が取れている優良物件でしょうし、その逆であれば賃料は低くなっているでしょう。

賃料が高ければ収益還元法による価格は高くなりますが、低ければ収益還元法による価格はダイレクトに低くなります。

このような管理運営の状態を反映させて建物価格を算出した結果、原価法による機械的な売買価格の配分額よりも、高い建物価格割合が求められる、その結果減価償却費を多く取れるという結果を得られる可能性があります。

この方法を採った場合の不動産鑑定士による建物価格の算定は、「実際に現在得られている賃料を前提に、土地建物一体の収益価格を求め、その価格から土地価格を控除する」という流れになります。

特にある程度以上に多い容積率を使用している建物の場合で、賃貸管理が良好であれば、先にご紹介した①~③の機械的な土地建物価格の配分方法よりも高い建物価格を算出できる可能性が高くなります。

ここで算出された土地建物価格割合を実際の売買価格に乗じて、減価償却対象となる建物価格として税務申告を行うこととなります。

まとめ

  • 減価償却は資産の取得価格を各会計年度に配分する手続き
  • 毎期の減価償却費を多く取れば、保有期間中の節税効果を得られる
  • 不動産の減価償却においてコントロールできるのは、減価償却の対象となる「建物価格」
  • 不動産鑑定士の評価を活用することで、物件の賃貸運営の状態まで反映した建物価格を算出することができる
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